AIデータセンターの拡張では、半導体性能だけでなく電力、冷却、接続インフラの整備が課題となっている。写真=Shutterstock

AI向け計算需要の急増を受け、データセンター業界が電力、冷却、GPU間接続という3つの制約に直面している。AIインフラの増強は、もはや半導体の性能向上だけでは進まず、送電網、熱対策、データ伝送基盤まで含めた見直しが必要になってきた。

米TechRadarが11日(現地時間)に報じたところによると、AIデータセンターでは電力需要が急拡大する一方、送電網や冷却設備、データ伝送インフラの整備が追いついていない。事業者各社は自家発電や液体冷却、光インターコネクト、次世代変圧器の導入を進めているが、コストやサプライチェーンの制約が重荷となっている。

最大の制約として浮上しているのが電力だ。AIデータセンターでは演算負荷に応じて消費電力が大きく変動する。推論処理が減れば電力使用量は下がるが、利用が急増すれば短時間で大量の電力を必要とする。

こうした変動は高調波の発生や電力品質の悪化を招き、変圧器の過熱リスクを高める可能性がある。加えて、電力設備そのものの不足も深刻化している。高電圧変圧器の調達リードタイムは、2020年時点の6〜12カ月から、足元では2〜4年に延びた。

世界有数のデータセンター集積地である米バージニア州北部では、新設施設の送電網接続に最長14年かかるとの見方も出ている。米電力業界は2025年に2080億ドルを投じ、2025〜2030年にはさらに1兆1000億ドルの追加投資を計画しているが、データセンターの電力需要の伸びには追い付けないとの指摘がある。

このため、データセンター事業者は送電網への依存を下げるため、自家発電設備の拡充を急いでいる。イーロン・マスク氏が率いるxAIは、米テネシー州メンフィスの「Colossus」データセンターに、400MW超の発電能力を持つ移動式天然ガスタービン59基を追加した。地域の送電網接続を待たず、GPUクラスターを稼働させる狙いとされる。

長期的な選択肢としては小型モジュール炉(SMR)も挙がるが、建設コストの高さや商用化のハードルを踏まえると、当面は大規模データセンターの電力需要を支える現実的な解決策とは言いにくい。

冷却も電力と並ぶ主要課題だ。最新のAIサーバーはGPUの高集積化が進み、ラック当たりの消費電力が急上昇している。一部の高密度ラックは50〜100kWを超え、100kW超を前提とする設計も広がりつつある。従来の空冷設備が主に30〜40kW水準を基準に設計されてきたことを踏まえると、冷却方式の転換は避けにくい。

大規模なAIクラスターを空気だけで冷やすには、大量の空気を高速で循環させる必要がある。ファンの回転数を上げれば消費電力が増え、データセンター全体のエネルギー効率も低下する。サーバーの発熱を抑えるために、さらに冷却用電力を積み増す悪循環に陥りかねない。

このため業界では液体冷却の導入が拡大している。代表例は、GPUに冷却プレートを直接接触させて熱を吸収する直接液体冷却だ。空気より熱伝導効率の高い液体を使うことで、高密度サーバーの発熱を効率よく処理できる。

代替技術として注目されるのが、絶縁性液体を用いる相変化型浸漬冷却だ。液体が発熱部品に触れて蒸発し、その際に熱を吸収する。その後、蒸気を凝縮して再循環させる仕組みで、方式やシステム構成によっては冷却エネルギー消費を抑えられ、最大40%の削減効果を示す技術もあるという。

Microsoftは新型データセンターに、密閉循環型の液体冷却システムを採用した。冷却水を循環させてサーバーの熱を吸収し、冷却設備で温度を下げて再利用する方式で、継続的な補水の必要性を減らせる点が利点とされる。

もっとも、液体冷却は初期導入コストが高い。既存データセンターへの適用には、設備だけでなく運用体制の見直しも必要になる。高負荷環境ではポンプとラジエーターファンが同時に稼働し、騒音が大きくなる可能性もある。

GPU間接続も見直しを迫られている。従来の銅配線による電気接続は、距離が伸びるほど信号損失が大きくなり、伝送速度や帯域幅が高まるほど信号品質の維持が難しくなる。GPUやネットワーク機器が密集する環境では、電磁干渉や配線の抵抗損失も課題だ。電気信号の伝送で発生する熱は、冷却負荷をさらに押し上げる。

こうした事情から、データセンター業界では光インターコネクトの採用が広がっている。光ファイバーは光でデータを伝送するため、長距離でも信号損失を比較的小さく抑えられる。銅ケーブルより細い配線で高密度接続を構成でき、配線スペースを削減しやすい点も利点だ。これはサーバー内部のエアフロー確保にもつながる。

開発の焦点は、プラグイン型光モジュールにとどまらない。GPUと光学部品をより近い位置で統合する方向へ進んでおり、シリコンフォトニクスやコパッケージドオプティクス(CPO)は、電気信号の移動距離を短くしてデータ伝送効率を高める技術として注目されている。

一方で、コスト負担はなお大きい。構成によっては、光インターコネクトの費用が銅線ベースの接続に比べて最大7倍に達するとの指摘もある。ただ、AIクラスターの規模拡大と帯域需要の増大が進むほど、銅配線だけで性能と電力効率を両立するのは難しくなり、光接続への移行圧力は強まっている。

電力設備分野では、ソリッドステート変圧器(SST)も代替技術として浮上している。従来の変圧器が主に磁場を用いて電圧を変換するのに対し、SSTはパワー半導体と高周波パワーエレクトロニクス回路を活用する。電圧を能動的に制御し、電力品質を管理しやすいため、負荷変動の大きいAIデータセンターに適した技術とみられている。

効率は設計や運転条件によって97〜99%程度とされ、既存変圧器の95〜97%と比べて差は大きくないようにも見える。ただ、大規模データセンターでは膨大な電力を継続的に消費するため、わずかな効率改善でも長期的にはエネルギー損失の抑制につながる可能性がある。

ただし、SSTはパワー半導体や高周波部品を使うため初期コストが高く、保守や信頼性検証の面でも課題を残す。一部の設計では、既存の低周波変圧器に比べてkVA当たりコストが5倍超になる可能性があるという。

それでも供給拡大の動きは続いている。Siemensはドイツの電力設備企業Rheinhuasenと、モジュール型SSTの量産を進めている。AIデータセンターの電力需要増に対応し、次世代の電力変換技術を産業分野へ展開する狙いだ。

北米では現在、66GW規模の新規AIデータセンター容量が建設中とされる。ただ、今後の競争力を左右するのはGPU性能やサーバー台数だけではない。送電網への接続に要する時間、高密度サーバーの熱処理能力、大規模GPUクラスターを効率よくつなぐ通信技術がそろって初めて、拡張計画は実行に移せる。

AIインフラ拡張競争の軸足は、演算性能そのものから、それを支える基盤設備へ移りつつある。電力、冷却、データ伝送という3つの制約をどこまで解消できるかが、今後のデータセンター増設ペースと運用コストを左右しそうだ。

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