米航空宇宙局(NASA)は、国際宇宙ステーション(ISS)の後継となる民間宇宙ステーションの提案募集を始めた。2030年以降も低軌道での有人活動を維持する方針で、民間主導への移行を進める。初期の有人輸送についてはNASAが支援する。
Ars Technicaが9日付で報じたところによると、NASAは宇宙飛行士が低軌道で滞在し、研究を行う民間宇宙ステーションの開発に向けた提案依頼書(RFP)を公表した。
今回の公募は、ISS退役後の低軌道拠点を民間主導へ移行するための本格手続きと位置づけられる。RFPは約360ページに及び、科学研究や技術開発、宇宙飛行士の訓練のため、低軌道での有人活動を継続する計画を示した。
提案書の提出期限は12月8日。NASAはこの段階で少なくとも2社を選定し、来年4月に結果を公表する計画だ。第1段階では、選定企業に少なくとも1億ドル(約150億円)を支援する。
事業は段階的に進める。NASAは来年始まる第2段階で宇宙ステーションの開発と認証を支援し、第3段階ではNASAの宇宙飛行士を民間宇宙ステーションへ送るミッションを少なくとも4回調達する方針だ。将来の契約規模は数十億ドルに達する見通しとしている。
今回のRFPで焦点の一つとなるのが、乗員輸送を巡るNASAの支援だ。これまでの議論では、民間宇宙ステーションの運営企業が宇宙飛行士の輸送を含めてサービスを提供する案も検討されていたが、今回の公募では入札企業の負担を軽減する条件が盛り込まれた。
入札企業は、Boeingなど輸送事業者との正式契約や意向書を提出する必要がない。NASAが民間宇宙ステーション向けの初期4回の有人輸送ミッションに必要な輸送を支援できると明記したためだ。事業者がステーションの開発や認証、運用体制の整備に注力できるようにする狙いがある。
こうした対応の背景には、米国の有人輸送手段が限られている現状がある。SpaceXは、ISSが2030年または2032年に退役した場合、Crew Dragon宇宙船を可能な限り早期に退役させる計画を示してきた。民間宇宙ステーションの運営企業に輸送座席を販売する提案も行っていないという。
NASAは、BoeingのStarlinerの有人認証作業を支援するため、最近3億5900万ドル(約539億円)を追加支援した。今回のRFPには輸送費の試算も盛り込まれた。2030年時点で、4人乗りの有人飛行にかかる費用は3億2500万ドル(約488億円)、貨物飛行は3億ドル(約450億円)と見積もっている。
ジャレッド・アイザックマンNASA長官は、低軌道での有人活動を継続する考えを強調した。低軌道拠点は、研究や技術開発、乗員訓練に加え、月・火星探査の準備にも必要だと説明。民間宇宙ステーションがこうした機能を担えば、米国の宇宙産業に新たな機会を生み、NASAはより困難な探査ミッションに資源を振り向けられるとしている。
入札参加の有力候補としては、Axiom Space、Voyager Space、Vast Spaceなどが挙がっている。Blue Originは過去の資金支援段階で選ばれていたが、今回のプログラムへの関与の度合いは不透明という。SpaceXも当面、今回の入札に参加する可能性は低いとみられている。
候補企業はRFPの公表を歓迎した。Voyager SpaceでStarlab宇宙ステーション事業を率いるマシュー・スミスCEOは、今回の公表を重要な節目と評価。NASAが産業界と政府の意見を反映したとしたうえで、Starlabは次世代の米国宇宙ステーションに適した事業計画と技術的解決策を備えていると述べた。
Axiom Spaceも最終版の公募内容を精査し、次の手続きに備えていると明らかにした。同社は、有人宇宙飛行ミッションの実績と軌道上ハードウェア開発の経験を基に、NASAの低軌道計画に適合する能力を示す考えだ。
今回の事業の成否は、ISS退役後も低軌道での有人活動を途切れさせない基盤を構築できるかにかかっている。今後の競争では、宇宙ステーションの設計に加え、輸送体制の確保、認証スケジュールの順守、NASAミッションを実際に遂行できる現実性が主な評価軸となりそうだ。