月の極域に最大10億トンの水が存在すると仮定しても、大規模な月面都市を長期にわたって維持するのは難しい――。そんな研究結果が明らかになった。水資源の制約が、人類の月面定住の規模を左右する主要因になり得るとしている。
Gigazineが10日(現地時間)に報じたところによると、米スミソニアン天体物理観測所のマーティン・エルビス氏とジョナサン・マクドウェル氏の研究チームが、国際学術誌「Frontiers in Space Technologies」に研究成果を発表した。
月の極域には、太陽光が届かない永久影領域がある。こうした極低温環境では氷が長期間保存される可能性があり、飲料水の確保に加え、食料生産や酸素供給にも活用できる資源として注目されてきた。
ただ、研究チームは月の水を無尽蔵の資源とみなすべきではないと指摘する。月に10億トンの水があり、住民1人当たりが生活と農業で年間500トンを消費すると仮定した場合、水を再利用しなければ、100万人規模の都市を維持できるのは約2年にとどまるという。
さらに、国際宇宙ステーション(ISS)並みの98%の水再利用率を前提にしても、状況は大きくは改善しないとした。年間使用量の2%が失われるため、100万人規模では約100年で枯渇する計算になる。一方、10万人規模であれば約1000年に延ばせるとしている。
もっとも、10億トンという前提自体が楽観的な推計だという。先行研究では、水が豊富と見込まれる主要な8つのクレーターにある埋蔵量は、合計で約3400万トンと見積もられている。実際にどこまで採掘可能かは、なお確認されていない。
一方で、電力は水ほど大きな制約にはならないと分析した。月の極域の日照条件に恵まれた地域に大規模な太陽光発電設備を設置すれば、100万人規模の都市を支えることは可能だと説明している。
研究チームは対応策として、水再利用効率のさらなる向上に加え、垂直農法による消費量の削減、小惑星からの水輸送、追加の埋蔵地点の探査を挙げた。
その上で、長期的な月面定住を実現するには、人口規模に見合った体系的な水資源管理が不可欠だと強調した。