人工知能(AI)データセンターの電力需要が急増するなか、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の経済性がコスト面でガスタービンを上回り始めた。電源確保競争でガスタービンの価格上昇と調達遅延が進む一方、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた構成が代替電源として存在感を高めている。
米TechCrunchが9日(現地時間)に報じたところ、エネルギーコンサルティング会社のWood Mackenzieは、調査対象の43市場すべてで4時間型BESSのコストが開放型ガスタービンを下回ると分析した。AIの普及でデータセンターの電力消費が膨らむなか、発電設備の確保に必要な費用と時間が、電源選定の重要な判断材料になっている。
データセンター開発会社はこれまで、需要増に機動的に対応できる天然ガス火力を有力な選択肢として検討してきた。なかでも開放型ガスタービンは、複合サイクル型に比べて構造が簡素で、比較的短期間で導入できるため、需要が集中する時間帯を支えるピーキング電源として活用されてきた。
ただ、AIデータセンターの建設競争が加速するなかで、ガスタービンは需要増を背景に価格が上昇している。開放型でも調達には2~4年を要し、複合サイクル型のリードタイムは2030年代初頭まで延びたという。こうした供給制約が新規の天然ガス発電設備の導入コストを押し上げ、従来の採算前提にも変化をもたらしている。
一方、BESSはコスト面で競争力を高めている。Wood Mackenzieは、蓄電池による供給コストは今後も低下する一方、ガスタービン発電のコストは今後数十年にわたって上昇するとの見通しを示した。電力需要が急増する市場では、蓄電池は補完手段にとどまらず、ガス火力のピーキング電源を代替し得る選択肢として位置付けられている。
新設電源のなかでは、太陽光発電の価格競争力が最も高いとの評価が示された。Wood Mackenzieは、調査対象の全市場で太陽光発電が最も低コストの新規電源になると分析している。太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、日中に発電した電力を蓄え、需要の高い時間帯に活用できるため、供給の柔軟性も高まる。
もっとも、北米では関税と輸入規制が太陽光発電コストの重荷になっている。Wood Mackenzieは、関連政策が太陽光設備の価格を押し上げていると分析した。それでも大規模太陽光プロジェクトは、相対的に価格上昇への耐性があると評価された。
米国の税制支援も、プロジェクトコストを左右する変数の一つだ。2027年末までに着工または完工するプロジェクトは、いわゆる「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル」のセーフハーバー条項により税額控除を維持できる。これにより、計168ギガワット(GW)規模のプロジェクトが短期的な価格上昇の影響を一定程度回避できるという。
地域別にみても、蓄電池の競争力は鮮明だ。Wood Mackenzieは、中東・アフリカでは4時間型BESSのコストが2035年までにガスのピーキング発電を33%下回ると予測した。同地域のすべてのガス市場で、蓄電池がコスト競争力を背景にガスのピーキング電源を代替できるとみている。
中国のエネルギー貯蔵コストは、周辺国より55%低い水準と集計された。地域ごとのサプライチェーンや設備コストの差が、蓄電システムの採算性にも影響している格好だ。
Wood Mackenzieのシニアアナリスト、アメド・ジャミル・アブドゥラ氏はプレスリリースで、蓄電池とガスタービンの採算性の変化は決定的であり、両者のコスト差は今後さらに拡大するとの見方を示した。
AIデータセンター向けの電力確保競争が続くなか、発電設備の選定基準も変わりつつある。ガスタービンは依然として安定供給を担う有力な手段だが、高い設備価格と長い調達期間が重荷になっている。電力コストを抑えつつ供給の柔軟性を確保できる手段として、太陽光発電と蓄電池の組み合わせが広がる可能性が高まっている。