クラウドに依存せず、PCなどの端末上でAIを動かすオンデバイスAIの競争が本格化している。NVIDIAに続き、Microsoftも関連製品を前面に押し出し、PCを軸としたAI基盤の主導権争いに踏み込んだ。あわせて、個人向けAIエージェント分野ではスタートアップによる大型資金調達も相次いでいる。
Microsoftは、NVIDIAのAIチップを搭載した新型ノートPC「Surface Laptop Ultra」を公開した。AI処理をクラウドだけでなく端末側でも幅広く実行できる設計とし、オンデバイスAI市場への対応を強める。
利用者は端末に各種モデルをインストールして実行でき、クラウドサービスの高額な月額料金負担を抑えられるとしている。
Microsoftは同時に、WindowsをAIエージェント向けプラットフォームとして育成する方針も明確にした。その柱として掲げたのが「ハイブリッド知能(hybrid intelligence)」で、AI処理をPCとクラウドに適切に分散させる考え方だ。
NVIDIAも、個人向けAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX Spark」の64GBモデルを公開した。DGX Spark 64GBは端末上でローカルエージェントを動かせるとし、クラウドに依存しない処理を訴求する。
オンデバイスAIは万能ではないが、機微なデータをクラウドに載せることに抵抗のある利用者にとっては、有力な選択肢になりつつある。個人利用や実務の一部を端末側で処理できるとの受け止めも広がっている。
こうした流れは、企業向けにとどまらず個人向けAIエージェント市場にも波及している。ビッグテックに加え、パーソナルAIエージェントを掲げるスタートアップも資金調達を加速させ、市場開拓を急いでいる。
AIエージェントのスタートアップManusは、Metaとの決別後で初となる資金調達ラウンドで5億ドル超を確保した。オープンソースAIエージェント「Hermes」を開発するNous Researchも、企業価値を15億ドルと評価され、9000万ドル規模のシリーズB資金を調達した。
パーソナルAIエージェントのスタートアップTabも、企業価値を3億ドルと評価され、新規参入を表明した。HarkはパーソナルAIエージェントサービス「Hark Pro」を正式公開した。
Hark Proは、メールや予定表、保存ファイル、決済情報など利用者のデジタル生活全般と連携し、PC上の作業を代行するという。パーソナルAIエージェントサービス「Instinct」は、アカウントを持たない友人を含むグループチャットでも自社AIエージェントを利用できる機能を追加した。
このほか、AIを巡る国内外企業の動きも広がっている。
Googleは「Gemini」を、質疑応答型AIから実務を遂行するエージェンティックAIへ拡張する。回答にとどまらず、利用者に代わって作業まで処理する統合エージェントを公開し、まずは企業向けに展開する方針だ。
OpenAIは最新AIモデル「GPT-6」を、無料利用者を含むChatGPT全体に広げる。質問内容に応じて回答画面をリアルタイムに構成する「Intelligent UI」も導入する。
さらにOpenAIは、欧州連合(EU)でChatGPTとCodexが生成したテキストに、不可視の電子透かしを適用する。
Microsoftは「Microsoft-Decision-1」を公開し、意思決定AIモデル分野に参入した。TypeSafeは「Zeb」を軸に同分野を広げるとともに、企業価値を75億ドルと評価され、8億7000万ドルの資金を調達した。
NVIDIAが、オープンソースAIスタートアップReflectionAIへの追加出資や買収を検討しているとの報道も出ている。
プロセス自動化ソリューションを手がけるAutomation Anywhereは、Nordic Capitalから対話型音声AI企業Boost.aiを買収する方針を決めた。顧客対応まで自律型自動化の対象を広げる狙いがある。
Cohereは、大規模組織内でAIエージェントを運用できるプラットフォーム「North 2」を公開した。今回のアップグレードでは、多段階タスクを処理するオーケストレーション機能と、トークン支出の上限管理機能の強化を打ち出した。
フランスのAIスタートアップMistralは、韓国市場での展開を加速している。採用ページによると、ソウル勤務の正社員としてApplied ScientistとResearch Engineerを募集している。
Mistralはあわせて、1兆パラメータ規模の新たなオープンウエイトAIモデル「Mistral Large 4」も公開した。
フランスのSchneider Electricは、米産業用ソフトウェア企業PTCを226億ドルで買収する。PTCの技術が製品設計やエンジニアリング領域の拡張に有効と判断した。
同社はこれを、AIが機械や物理製品に組み込まれる「産業AI」時代を見据えた戦略と位置付けている。
AI・クラウド企業のMegazone Cloudは、企業が既存のAI環境を維持したまま、データやAIエージェント、運用、セキュリティ、コストを統合管理できるエンタープライズAI OS「AIR Studio v3」を発売した。
HancomはAmazon Web Services(AWS)と協力し、AIワークフォースプラットフォーム「Nomadian」を米国市場に投入する。12月末のベータ公開を前に、製品高度化から価格戦略、マーケティング戦略までAWSと設計し、AWS Marketplaceでの販路確保も進める。
マルチモーダル動画理解AI企業Twelve Labsは、エゴセントリックデータを理解できるよう設計した視覚言語モデル(VLM)「Pegasus 1.6」を発売した。これまでメディア、エンターテインメント、スポーツ、公共分野などで、映像内の行動や出来事、その前後の文脈を理解する汎用動画理解技術を展開してきた。
足元では、ロボットを含むフィジカルAIや製造現場など、産業AX領域にも適用範囲を広げている。
ASI Corpは、各種生成AIサービスやAIエージェントを検索・比較し、導入や契約まで進められるAIaaS(AI as a Service)プラットフォームを発売した。
LG U+は、グローバル購読プラットフォーム企業Bangoと連携し、これまで国内で利用しにくかった海外のAI・コンテンツサービスを自社の購読プラットフォーム「U+doc」で提供する。
コスト競争力の高いオープンウエイトモデルを武器に、中国のAI企業がOpenAIやAnthropicを追い上げるなか、OpenAIとAnthropicの競争も一段と激しくなっている。足元ではOpenAIが、Anthropicに後れを取っていた企業向け市場でシェアを大きく伸ばしており、動向が注目される。