米国で政権交代が起きた場合の規制リスクに備え、暗号資産業界では今のうちに金融機関などのブロックチェーン導入を広げ、後戻りできない段階まで定着させるべきだとの見方が出ている。
Cointelegraphが10月8日(現地時間)に報じたところによると、Canton(CC)の開発を手がけるDigital Assetの共同創業者兼CEO、ユバル・ルーズ氏は、シンガポールで開かれた「Token2049」で、足元の規制環境を生かして機関導入を加速すべきだと述べた。
ルーズ氏は、2028年の米大統領選までにブロックチェーンを広く使われる金融インフラとして定着させる必要があると強調。「2028年に何が起きても、元に戻せない状態にしなければならない」と語った。
次回の米大統領選は2028年11月7日に予定されている。政権が交代すれば、暗号資産を巡る規制の優先順位や政策方針が変わる可能性があることを念頭に置いた発言とみられる。
同氏は普及の道筋について、UberやAirbnbを引き合いに出した。両サービスは、政策当局が本格的に規制へ動く前に市場へ深く浸透したという。
ルーズ氏は、そうしたサービスは立法で止めようという議論が本格化した時点で、すでに広く使われていたと説明。政策対応に先んじて実利用が定着すれば、その後に規制が揺り戻す可能性は小さくなるとの見方を示した。
こうした発言は、米国のClarity法案が9月に上院で手続き上の採決を通過できなかった後に出たものだ。立法は足踏みしている一方、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)は既存の権限の下で暗号資産のルール整備を進めている。
同じパネルに登壇したBinanceの共同CEO、リチャード・テン氏は、Clarity法案の成立にはなお期待していると述べた。法制化が実現すれば、規制後退を防ぎ、機関マネーの流入を後押しする可能性があるとの見方を示した。
テン氏はまた、現在の進展が覆されることが業界にとって「最大の恐怖」だとも語った。
一方、Franklin TempletonのCEO、ジェニー・ジョンソン氏は、立法が進めば確実性は高まるとしつつも、業界がClarity法案の成立だけに期待すべきではないと指摘した。
ジョンソン氏は、SECとCFTCがすでに規制の明確化を進めており、その過程でもイノベーションや機関導入は進み得ると説明した。
業界関係者の発言を総合すると、焦点は法案の成否そのものより、市場への定着をどこまで早められるかにある。法整備が進めば制度面の安定性は高まるが、実利用と機関参加が十分に広がらなければ、政権交代や規制方針の変化で市場が再び揺らぐとの認識が背景にある。
Token2049の会場では、制度整備とは別に、金融業界で実際に使われる基盤としてブロックチェーンを拡大すべきだとのメッセージが繰り返し示された。米国の規制体系がなお完全には整理されていない中でも、当局の既存権限の下で制度化は進んでおり、今後はClarity法案の再推進に加え、機関導入がどの程度の速度で進むかが注目点となる。