Toshibaは、AIデータセンターの拡大に伴って高まる大容量ストレージ需要に対応するため、フィリピンでHDD生産を増強する。約600億円を投じ、2027年度までにAI・クラウド向けHDDの生産能力を2025年度比で記憶容量ベースほぼ2倍に引き上げる。HDD事業で大規模な設備増強に踏み切るのは約5年ぶりとなる。
8日付のTechRadarによると、新たな生産ラインでは、従来品に比べて1台当たり最大40%多くのデータを記録できる大容量製品を生産する。Toshibaは2030年ごろに65TB級HDDの量産を目指し、その後は100TB級製品の開発も進める計画だ。ドライブ当たりの容量を高めることで、出荷台数を同じ比率で増やさなくても、データセンターにより多くのストレージ容量を供給できるとしている。
背景には、AIの普及に伴うデータ量の急増がある。SSDは読み書きが高速な一方で、大規模なデータ保存ではHDDよりコストが高い。報道によれば、SSDの保存コストはHDDの約20倍に達するという。処理速度よりも大容量かつ長期の保存需要が重視されるAIデータセンターでは、HDDの競争力がなお高いとの見方だ。
需給の逼迫は競合各社でも続いている。SeagateはニアラインHDDの生産能力の大半を2028年まで埋めており、一部顧客とは2029年以降の供給分についても協議しているという。Western Digitalも、2027年分の相当部分が長期契約で確保され、その後の生産分についても先行確保が進んでいる。
部材メーカーも増産に動く。Nitto Denkoは、HDD磁気ヘッド用サスペンション向け「CISFLEX」の生産拡大に280億円を投じ、2028年度の生産能力を2025年比で40%引き上げる計画だ。
Toshibaはあわせて、フィリピン工場で検査工程やクリーンルーム内作業の自動化も拡大する。増設に伴って必要となる追加人員を従来方式に比べて約40%削減し、歩留まりの改善も進める方針だ。現在10%強とされる世界HDD市場でのシェアについても、中期的には30%への引き上げを目指す。