AMDのリサ・スー会長兼CEOは10月7日、AI市場の拡大が続くなかでも、ゲームを同社の中核事業として位置付ける方針を示した。機械学習の活用をグラフィックス分野にとどめず、ゲーム開発工程にも広げることで、性能と制作効率の底上げを狙う。
スー氏は同日、ソウル・龍山区のドラゴンシティで開催された「AMD Gamers Day 2026」に出席し、「ゲームはコンピューティングにおける重要分野であり、常に高い性能が求められる」と述べたうえで、「AMDにとってゲームは非常に重要な事業だ」と強調した。
スー氏の韓国訪問は3月以来、約7カ月ぶり。午前中は韓国のAIエコシステムとの協力策を協議し、午後はゲーマー向けのイベントに参加して、AMDのゲーム事業と技術戦略を説明した。
会場では、韓国のゲーマーについても言及した。スー氏は「過去10年を振り返ると、韓国のRyzenおよびRadeonユーザーは世界でも特に情熱的で、高性能を追求する層だった」としたうえで、「韓国のゲーマーは世界最高水準の性能を求めている」と語った。
その理由については、「ゲームが好きな理由の一つは、技術の限界を押し広げ続けることにある」と説明。「ゲーマーは最も期待値が高く、最高の性能を求めるユーザーだ」と述べた。
◆RyzenやZen、X3Dも当初からゲーム重視 PC以外の分野も継続支援
AMDは、プロセッサ開発の初期段階からゲームを主要用途の一つとして重視してきたという。
スー氏は「RyzenとZenを最初に開発したとき、最も重要な用途として考えていたのがゲームだった」と述べた。「Zen 1からZen 6まで、各世代の開発を通じて、どうすればゲーム体験を改善できるかを考え続けてきた」とも語った。
ゲーム性能に特化したX3Dプロセッサについても、「X3Dはゲーム向けに開発した」と強調した。
対象はPCに限らない。スー氏は「ユーザーはPCでもコンソールでも携帯型デバイスでもゲームを楽しむ」とし、「AMDは今後もPC、コンソール、携帯型デバイスなど、さまざまな形態の機器を継続して支援していく」と述べた。
ジャック・フイン Computing and Graphics Group上席副社長は、AMDの技術を採用したゲーム関連機器が世界で約10億台に上ると紹介した。
フイン氏は「PCだけでなく、PlayStation、Xbox、Steam Deck、ROG Ally、Legion Goのような携帯型ゲーム機も重要だ」と説明。「ハイエンドからエントリー、中価格帯まで幅広い選択肢を提供したい」と語った。
◆ゲームとAIの融合加速 画質向上から開発工程まで
AMDはゲーム事業におけるAI活用も拡大する方針だ。機械学習をゲームグラフィックスと開発工程の双方に取り入れ、性能向上と制作効率化につなげる。
スー氏は「現在はAIへの関心と期待が非常に大きいが、ゲームもまたコンピューティングの重要分野だ」と述べ、「いまやゲームとAIは結び付いている」との認識を示した。
フイン氏は、AMDの機械学習技術がゲーム性能の向上や画質改善に活用されていると説明した。FSRでは、機械学習ベースのアップスケーリングやフレーム生成、レイ再生成などを適用しているという。これまで外付けグラフィックスで展開してきた機械学習技術を、年内にはAPUや携帯型ゲーム機にも広げる計画だ。
AIの活用は、ゲーム制作の工程にも及ぶ見通しだ。
フイン氏は、大作ゲームの開発に長い期間を要する現状に触れたうえで、「AIを活用し、10年規模の開発期間を3〜4年程度に短縮していく方向を目指したい」と述べた。AIベースの開発ツールを使えば、スタートアップや小規模開発チームでもゲーム制作に参入しやすくなるとの見方も示した。
一方で、AIが制作者の役割を置き換えるべきではないとの考えも示した。
フイン氏は「制作者が本来意図したものは守らなければならない」としたうえで、「AIはアーティストの創造性を代替するものではなく、創造性を拡張するためのツールであるべきだ」と述べた。
◆価格負担には長期サポートで対応
ゲーム用PCなどハードウェア価格の上昇については、既存プラットフォームの長期サポートを通じて、アップグレード負担を抑える考えを示した。
フイン氏は「価格は非常に重視している」と述べ、既存のメモリやプラットフォームを活用しながら、より容易にアップグレードできるよう支援していると説明した。AMDはAM4のサポートを継続する一方、AM5についても2029年まで支援する計画だ。
韓国のゲーム会社との協業も続けている。フイン氏は、AMDがPearl Abyssと約2年前から協業していると紹介し、ゲーム開発各社と緊密に連携していると述べた。
スー氏は「AIの重要性が高まっているため、今後のAMDの新製品ではRyzenとAIがさらに密接に結び付いていく姿が見られるだろう」とし、「ゲームとAIの活用領域にはかなり大きな接点がある」と語った。
そのうえで、「今回のソウル訪問は短い日程だが、韓国のゲームファンにはぜひ直接会いたかった」と述べた。「ゲームはハードウェアやソフトそのものにとどまらず、人とコミュニティを一つに結び付けるものだ」とも話した。