中国向けに先端の浸漬型DUV露光装置の輸出が続けば、米国と同盟国が持つAI半導体の優位性が今後5〜10年で縮小、あるいは消失する恐れがある――。米国の政策研究機関がこう警告し、中国の先端AIチップ生産を抑えるには、チップ本体よりも半導体製造装置への輸出規制強化が重要だと訴えた。
Gigazineの6日付の報道によると、米国のAI・半導体政策研究機関であるTechnology & Statecraft Centerは最近公表した報告書で、こうした見方を示した。報告書は、競争力のあるAIチップを量産するには高度な半導体製造装置が不可欠であり、米国と同盟国の優位性の源泉は、中国の先端装置へのアクセスを制限してきた点にあると分析している。
報告書が特に焦点を当てたのが、浸漬型DUV露光装置だ。米国はこれまで、EUV露光装置と一部の高性能DUV露光装置を規制対象としつつ、装置によってはライセンス取得を条件に対中輸出を認めてきた。
ただ、こうした高性能DUV露光装置の供給が中国向けに続けば、中国は先端半導体の生産能力を相当程度確保できる可能性があると同機関はみる。中国が2030年代半ばまでに先端露光装置を大規模に国産・商用化する可能性は低いとし、それまでに海外製装置をどれだけ確保できるかが、AI半導体の生産格差を左右すると指摘した。
報告書は、現状の輸出が続けば、米国と同盟国のAI半導体の優位は「縮小するか、消失する」と警告している。
中国がどの程度DUV露光装置を確保できるかも重要な論点だ。報告書は、中国が2020年以降、ASMLの「NXT:1980i」を中心に約300台の浸漬型DUV露光装置を確保したと推定した。現時点の保有規模だけで米国を脅かすのは難しいとしながらも、同じペースでNXT:1980iや同等装置を追加導入し、AIチップ生産に振り向ければ、「数億個のH100級チップ」を生産できる基盤が整う可能性があると主張した。
このため同機関は、中国向けの浸漬型DUV露光装置の輸出を原則停止すべきだと提言した。現行の輸出管理では、乾式DUVや比較的性能の低い一部装置は許可なしで中国に輸出できる余地があるとし、乾式DUVを除く装置は対中輸出すべきではないとした。
ライセンス制度の運用にも課題があると指摘した。制度上は高性能装置の対中輸出に許可が必要でも、実際には大半が承認されているという。輸出規制の実効性を高めるには、許可要件を設けるだけでなく、中国が実際に確保できる装置の総量を減らす方向で制度を見直す必要があると訴えた。
さらに、中国が第三国を経由して装置を迂回調達する可能性にも言及した。オランダと日本が輸出規制の強化に消極的な場合、米国が海外直接製品規則(FDPR)を活用して追加規制に踏み切る可能性があるという。米国の技術や装置が使われるASMLの生産拠点を対象に、輸出規制を適用する案も示した。
中国の独自技術開発についても、長期的な不確定要素として挙げた。中国の国有企業が2026年7月にDUV露光装置の生産に着手したとの情報が伝えられたものの、同機関は当面、先端露光装置を大規模に商用化するのは難しいとみている。
今後のAI半導体の主導権争いは、中国が先端露光装置をどこまで確保できるかに左右される見通しだ。米国が実際に浸漬型DUV露光装置の輸出規制を強化するのか、あるいはライセンス制度の抜け穴をふさぐ追加策を打ち出すのかが、半導体サプライチェーンとAI競争の構図を左右する重要な焦点になりそうだ。