写真=Shutterstock。暗号資産のプライバシー技術を幅広く対象とした2つの規制案が同時に撤回された

米財務省傘下の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、暗号資産監視を巡る2つの規則案を撤回した。対象となったのは、非カストディアルウォレット取引に報告義務を課す2020年の案と、暗号資産ミキシングを主要な資金洗浄上の懸念事項に指定する2023年の案。プライバシー擁護団体や業界では規制負担の軽減と受け止められているが、当局はミキサーに対する監視を続ける考えだ。

Bitcoin Magazineによると、FinCENは6日(現地時間)、この2件の規則案について撤回の告示を提出した。いずれも、個人ウォレットの利用者や金融機関に広範な報告義務を課しかねないとして、これまでも議論を呼んでいた。

2020年の案は、顧客が非カストディアルウォレットに暗号資産を保管する場合、銀行などの金融機関に対し、3000ドル以上または1万ドル以上の特定取引について、記録や報告を求める内容だった。利用者が自ら管理するウォレットとの取引まで報告対象に含めようとしていた点が争点となっていた。

一方、2023年の案は対象範囲をさらに広げる内容だった。FinCENは、取引の送信元や送付先、金額を隠す行為をミキシングと定義し、共同資金、分割送金、使い捨てウォレット、資産間スワップなども幅広く含めていた。仮に施行されていれば、金融機関はウォレットアドレス、取引ハッシュ、IPアドレス、顧客の本人情報を当局に提出する必要があった。

Coin Centerは今回の決定について、「金融プライバシーにおける重大な勝利だ」と評価した。同団体は、ミキシングの定義が過度に広く、一般の暗号資産利用者がプライバシー保護のために使う通常の手法まで含みかねないと指摘してきた。

また、ミキシング取引がどこで行われたかを判別しにくいため、リスク回避的な金融機関が本来は問題のない国内取引まで報告する可能性があるとも主張していた。その結果、無関係な利用者が口座制限や口座閉鎖といった不利益を受けるおそれがあるとしていた。

FinCENも検討過程でこうした懸念の一部を認めた。意見公募では、定義が広すぎて合法的な活動を萎縮させるおそれがあることや、金融機関に過大な事務負担を課すとの指摘が寄せられたとしている。

今回の撤回は、ホワイトハウスの政策方針とも軌を一にする。2025年7月に公表された「大統領デジタル資産市場作業部会」の報告書は、合法的な利用者が公開ブロックチェーン上で私的に取引できる能力を行政府として支持するとしたうえで、財務省に関連規定の再検討を勧告していた。

同報告書は、犯罪者が資金洗浄のためにミキサーを利用している点を認めつつも、合法的な利用者も金融プライバシーの確保を目的に同様の技術を活用していると記していた。

もっとも、FinCENがミキサーを容認したわけではない。FinCENは、不法行為者が依然としてミキサーなどを使って捜査当局の追跡を妨げていると説明。資金洗浄やテロ資金供与のリスクについては引き続き監視し、今後あらためて対応を検討する可能性があるとしている。

今回の決定は、米国が暗号資産を巡るプライバシーと監視のバランスを見直す動きの一環といえそうだ。規則案そのものは撤回されたが、ミキシングと非カストディアルウォレットを巡る監視の是非は、今後も米国の規制論議における主要な争点であり続ける見通しだ。

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