暗号資産運用では、AIに全面委任せず人の判断を組み合わせる手法も広がっている(写真=Shutterstock)

暗号資産運用で、売買をAIに全面的に任せるのではなく、プロトレーダーの判断とAIの分析力を組み合わせる手法が注目されている。レバレッジを使わない現物取引を軸に、資金を複数のトレーダーに分散することで、全自動運用や高リスク取引の弱点を補う狙いがある。

ブロックチェーンメディアのCryptopolitanによると、暗号資産市場は24時間動き続ける。このため、仕事中や就寝中でも相場が大きく変動する可能性がある。チャートを常時確認しにくい投資家にとって自動化は有力な選択肢だが、売買判断のすべてを取引ボットに委ねる方式には限界もある。ニュース、流動性、投資家心理、突発的な材料など、過去データだけでは捉えにくい要素への対応が難しいためだ。

こうした課題を踏まえ、一部のプラットフォームでは人とAIの優劣を競わせるのではなく、役割を分けるアプローチを採っている。熟練トレーダーは異常な市場環境を読み解き、前提条件を見直せる。一方のAIは、個人では同時に処理しにくい大量の情報を分析できる。

Cryptopolitanは、その一例としてArbitFlowを紹介した。実際の売買判断はプロトレーダーが担い、自社AIは市場分析、ニュース監視、パフォーマンス評価、リスクシグナルの検出を支援する。AIが人に取って代わるのではなく、判断材料を補強する位置付けだ。

取引手法では、レバレッジを使わない現物取引を前面に据える。レバレッジ取引は少額の資金で大きなポジションを持てる半面、損失も膨らみやすい。相場が逆方向に動けば、取引所による強制清算のリスクも生じる。

これに対し、現物取引は借り入れを伴わず、暗号資産そのものを売買するため、レバレッジに起因する強制清算リスクはない。

もっとも、現物取引だから安全というわけではない。ビットコインやイーサリアムなどの価格は大きく下落する可能性があり、参入タイミングを誤ったり、プロトレーダーの判断が外れたりすれば損失は出る。長期の弱気相場ではポートフォリオ全体が打撃を受けることもあり、レバレッジを排しても投資リスクそのものがなくなるわけではない。

AIの役割も、完全自動売買より意思決定支援に重点を置く。24時間動くグローバル市場では、価格変動、経済指標の発表、規制変更、取引所の動向、暗号資産関連ニュースが同時並行で発生するためだ。

AIは、異常な値動きの検出、過去トレンドとの比較、関連ニュースの分析、トレーダーの直近パフォーマンスの変化把握などに活用できるとされる。

ただし、こうした分析結果がそのまま自動売買につながるわけではない。最終的には、戦略を理解したプロトレーダーがAIの分析を参照しながら判断を下す。

ArbitFlowは公開資料で、市場調査と戦略開発を2023年に開始したと説明している。自社AIは市場データに加え、トレーダーの行動も分析対象にしているという。

特徴として、資金を複数のトレーダーに分けて委託できる点も挙げる。ArbitFlowは、トレーダーの選抜にあたり、本人確認や経歴確認、模擬テストを実施したうえで、継続的に実績をモニタリングするとしている。

ユーザーはトレーダーの過去実績を確認でき、「ライブトレーディング」機能を通じて取引状況の大半を把握できるという。最低投資額は25ドル(約3750円)。

ただ、過去の実績は将来の収益を保証しない。ユーザーは、成績指標の算出方法、手数料、運用の仕組み、損失が続いた場合の対応などを確認する必要がある。複数のトレーダーに資金を分散しても、市場全体が下落すれば損失を避けることはできない。

結局のところ、このモデルの要点は人か機械かの二者択一ではない。AIは大量の情報を迅速に分析・監視でき、プロトレーダーはモデルだけでは判断しにくい局面で、文脈や経験を踏まえた判断を加えられる。

現物取引を土台に、AIを分析ツールとして活用しつつ、最終的な売買判断は人が担う――。そうした運用モデルが、全自動売買やレバレッジ取引とは異なる選択肢として示されている。

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