写真=ジェイク・スタウチ氏のXアカウントより

AIが雇用を奪うとの議論が続く一方で、AIの普及によって新たに生まれる職種にも注目が集まり始めている。業務自動化スタートアップServalの創業者兼CEO、ジェイク・スタウチ氏は、自動化の設計から社内への定着までを担う「自動化エンジニア」の重要性が高まっていると指摘した。

スタウチ氏は最近、X(旧Twitter)への投稿で、AIは単に仕事を置き換えるだけではなく、反復的で負担の大きい業務を減らし、人がより重要な業務に集中できるようにすると主張。そのうえで、AI時代を象徴する新たな職種の一例として「自動化エンジニア」を挙げた。

同氏によると、新しい技術が登場するたびに、それ以前には存在しなかった仕事が生まれる。自動化エンジニアもその一つで、10年前はもちろん、2年前でさえこうした職種はほとんど成立していなかったという。

企業でこの職種への需要が高まっている背景には、自動化ニーズの拡大に加え、自動化ツール自体の開発や実装が以前より容易になったことがある。一方で、何を自動化すべきかを見極め、実際に組織へ根付かせることは依然として難しいとスタウチ氏は見ている。

その理由として、社員ごと、部門ごとに事情が異なり、部門間の利害や既存の業務プロセスが複雑に絡み合っている点を挙げた。こうした環境では、現場の要件をチームとともに把握し、最新ツールを使って実装まで進められる人材が必要になるという。

自動化エンジニアの役割は、社内の各種申請や問い合わせを管理するチケットを個別に処理するだけではない。例えば、アクセス権限の申請が人事、法務、ITの各部門にどのような影響を及ぼすのかを見渡しながら、業務全体を設計する視点が求められる。さらに、依頼が発生してから対応するのではなく、その前段階でどこに自動化を組み込むべきかを判断する役割も担う。

スタウチ氏は、自社がSeatGeekと進めた事例も紹介した。SeatGeekがChatGPT Enterpriseを導入した際、IT部門には権限設定や利用申請などの依頼が急増したという。初日の依頼件数は平常時の11倍に達し、3日目には社員の多くがチケットを起票した。

当時は、社員が申請項目を一つひとつ手入力しなければならず、リスクの高低にかかわらず、すべてのチケットに管理者承認が必要だったという。

Servalは1月にSeatGeekとの協業を開始し、3週間でIT関連依頼の40%を自動処理した。さらに60日以内に、この比率は50%を超えたとしている。

スタウチ氏は、自動化によって既存メンバーが職を失うことはなかったと説明する。対象業務を担っていた人材は、カスタマーサポート、技術コンプライアンス、法務などの部門へ移り、これまでエンジニアが不在だった領域でも自動化を進めているという。

さらに、SeatGeekのカスタマーサポート部門の責任者は成果を受けて、自動化エンジニアを5人増員したと紹介した。Fortune 20企業でも、すでに同様の人材を社内に配置しているケースがあるとしている。

同氏は、自動化は単にソフトウェアを導入すれば終わるものではないとも強調した。いまでは自動化フローそのものを作ることは以前より身近になったが、人や部門ごとの事情、文書化されていない数多くの意思決定まで踏まえて設計する作業は、なお経験ある人材にしか担えないとみている。

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