写真=ハンター・ライス氏のXへの投稿

InstinctやMeta Museなど、パーソナルAIエージェントを巡る競争が熱を帯びている。大手テック企業に加え、有力スタートアップも相次いで参入する中、アプリ「Sendit」を手掛けたハンター・ライス氏は、今後の勝敗を左右する要素として、利用者の人となりを捉える「アイデンティティー文脈」の重要性を指摘した。

市場の勢力図はなお見通しにくい。複数の事業者が並走する展開もあり得る一方で、時間の経過とともに勝者総取りの構図へ収れんする可能性もある。

そうした中、利用者2億5000万人のアプリ「Sendit」を手掛け、7本のアプリをApp Store首位に導いた実績を持つライス氏が、X(旧Twitter)に見解を投稿した。自身で10種類を超えるパーソナルAIエージェントを試した上で、競争の行方を分ける条件を論じている。

ライス氏は、試した製品について「1位になるための決定的な要素を備えたものはなかった」との認識を示した。

最初に挙げた課題は、初回利用時に直面する「コールドスタート」だ。試用したエージェントはいずれも、ゼロの状態から使い始めなければならなかったという。

同氏は、「エージェントが役に立つには、まず私のことを知る必要がある。だが、役に立つと感じて初めて、こちらも時間をかけて自分のことを教える気になる」と説明した。その上で、最初の30秒で「なるほど」と思わせる体験を提供することが重要であり、それはプロダクト設計側の責任だとした。

ライス氏は、同僚の体験を引き合いに出し、解決の鍵として「文脈」を挙げた。

同氏によると、その同僚の妻は、夫が月曜日に出勤することや好物を把握している。そのため前夜のうちに弁当を用意でき、夫はわざわざ頼んだり説明したりする必要がないという。

ライス氏は「この小さな行為の中に、いまエージェント企業が実現しようとしていることのすべてが詰まっている。常にそばにいて、常にこちらを気にかけ、好みを理解し、言葉にしなくても先回りしてくれることだ」と述べた。

その上で同氏は、文脈を2種類に分けて説明した。

1つ目は「行動文脈(Behavioral Context)」で、ユーザーの質問や指示をもとに、エージェントが推測し蓄積していく情報を指す。ただ、それだけで人物像を十分に捉えるのは難しいという。

例えば「スーパーボウルは何曜日か」と尋ねたとしても、その人が長年のアメリカンフットボールファンなのか、単にパーティーにいつ行くか知りたいだけなのかは分からない、と同氏は説明する。

さらに、「一度気になって尋ねたことが、そのまま好みとして保存されてしまう。本人がその質問を忘れた後も、その嗜好が推薦に反映され続け、結果としてAIが誤って描いた自分像の修正に追われることになる」と指摘した。

これに対し、2つ目は「アイデンティティー文脈(Identity Context)」だ。これは「何をするか」ではなく、「どんな人か」を示す情報を意味する。

ライス氏は「育った場所、職業、身近な人、これまで置かれてきた環境が含まれる。そうした情報があって初めて、スーパーボウルに関する質問も正しく解釈できる。そこに、単なる記憶と理解の違いがある」と述べた。

同氏は、パーソナルAIエージェント競争の行方は、このアイデンティティー文脈をどこまで的確に捉えられるかで決まるとの見方を示した。そうしたエージェントほど、より早い段階で有用性を示し、利用者の言葉を正確に理解し、継続的な学習を許容するだけの信頼も得やすいと説明している。

さらに、「良い対話が一度あれば、次の対話はより良い出発点から始められる。同僚の弁当作りのような小さな気配りこそ、パーソナルエージェントの基準になる。その感覚を提供できるなら勝てる」と述べた。

キーワード

#AI #AIエージェント #パーソナルAIエージェント #X #Sendit #Instinct #Meta
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.