同じものを食べても、1人で食べるか親しい相手と一緒に食べるかで血糖反応が変わる可能性があることが分かった。イスラエル・ヘブライ大学などの研究チームは、食事の内容だけでなく社会的近接性も血糖調節に影響し得るとして実験を行い、その結果を示した。
GIGAZINEが10月1日付で伝えたところによると、研究チームは被験者108人を対象に、白パン108グラムを食べた後の血糖値の変化を2時間にわたって追跡した。条件は、1人で食べる場合と、親しい相手と一緒に食べる場合の2つで、パンの種類と量は統一した。
結果は明確だった。親しい相手と食事をした場合、1人で食べた場合に比べて血糖値の急上昇が小さく、基準値に戻るまでの時間も短かった。共同著者で、ヘブライ大学心理学科教授のシャハル・アチル氏は、血糖調節は何を食べるかだけでなく、誰と食事をするかにも左右されると説明した。
研究チームは、同じ被験者が両方の条件を経験した場合と、別々の被験者群を比べた場合のいずれでも、同様の傾向を確認したという。親しい相手と一緒に食事をした条件では、血糖上昇の面積も小さかった。研究チームは、食事相手が単なる周辺要因ではなく、代謝反応そのものに関わる可能性を示す結果だとしている。
研究は血糖反応だけにとどまらない。研究チームは、寒さにさらされた際の体温変化や、ストレスを受けた後の交感神経反応についても調べた。その結果、1人でいる場合より、親しい相手と一緒にいる場合の方が体温低下は小さく、回復も早かった。ストレス後の交感神経系の活動も、より抑えられたという。被験者同士が身体に触れていたわけではなく、近くにいるだけで差が表れたとしている。
研究チームは、これまでの研究が社会的孤立の悪影響に主に焦点を当ててきたのに対し、今回の研究は社会的近接性が血糖代謝に直接的かつ定量的な利点をもたらし得ることを示したと説明した。2022年の研究では、孤独感が2型糖尿病の発症リスクを2倍に高める可能性があるとの結果も報告されている。
研究陣はこうした現象を「社会生理機能」と呼ぶ。人の身体は完全に独立して恒常性を維持する仕組みではなく、社会的なパートナーがそばにいることで、より効率よく自己調節を行うという考え方だ。アチル氏は、これまで身体は自己調節する独立したシステムとして捉えられてきたが、今回の結果は人間の生理機能が本質的に社会的であることを示していると述べた。
さらに同氏は、親密な関係を築くことで、身体が自己調節に使うエネルギーを減らせると指摘した。一緒にいること自体が代謝面で直接的な利点になり得るという。人間の身体は、誰かと共にいる時の方がより良く機能する、とも語っている。
今回の結果は、血糖管理が食事の種類や摂取量だけでは説明し切れない可能性を示している。食事環境や社会的関係が実際の生理反応に与える影響を数値で示した点で、健康研究における社会的要因の捉え方にも一石を投じそうだ。