イーロン・マスク氏(写真=Shutterstock)

イーロン・マスク氏は、AIの進展が人々の所得水準や医療の質を大きく押し上げる可能性があるとの見方を示した。雇用についても、仕事がなくなるというより、仕事の形そのものが変わると説明している。こうした変化が現実になれば、10〜20年先を前提にした老後資金の準備は意味を失う可能性があるという。

米『Business Insider』が9月30日に報じた。Tesla、SpaceX、xAIのCEOを務めるマスク氏は29日、ホワイトハウスで開かれたテクノロジー業界リーダーの会合の後、記者団に対して見解を語った。

AIの経済効果についてマスク氏は、「最も可能性が高いのは豊かさの時代だ」と発言。「ユニバーサル・ベーシックインカムにとどまらず、普遍的高所得が可能になる」と述べた。

さらに、AIとロボット、超知能が組み合わされば、世界中の誰もが最高水準の医療を受けられるようになるとした。「ロボットと超知能があれば、世界中のすべての人が、私を含めここにいる誰よりも良い医療を受けられる。驚くべきことだ」と語った。

労働市場の変化については、雇用喪失よりも職の再編に重きを置いた。AIが仕事を奪う可能性を問われると、「仕事は変わる」と答え、これは新しい現象ではないと指摘した。

その例として、かつては計算そのものが職業として成り立っていた時代を挙げた。現在ではデジタルコンピュータがその役割を担っていると説明し、「一日中計算だけをする仕事に戻りたい人はいないはずだ」と述べた。

AIが現時点で大量失業を招いているわけではないとも言及した。足元では「人に対する需要が非常に大きい」とし、AIが人類にもたらす「非常に大きな利益」と、人々が望む未来の実現に期待を示した。

こうした発言は、主要AI企業のトップらがホワイトハウスでAIの安全な開発に向けた原則に共同署名した直後に出たものだ。マスク氏は、NVIDIAのジェンスン・フアン氏、Metaのマーク・ザッカーバーグ氏、Alphabetのスンダー・ピチャイ氏、OpenAI共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏、Anthropicのダリオ・アモデイ氏らとともに、「フロンティア責任に関する共同誓約」に名を連ねた。

署名各社は、Claude、ChatGPT、Gemini、GrokなどのAIチャットボットを巡るリスクへの懸念が高まる中、AIを安全かつ責任ある形で開発すると約束した。専任チームによる内部統制を整えるほか、独立した外部監査・評価や、独立した取締役会委員会による点検も受ける方針だ。

マスク氏は以前から、AIの危険性について繰り返し警鐘を鳴らしてきた。過去のインタビューでは、AIやロボットが致命的な誤作動を起こすリスクは「ゼロではない」としたうえで、明るい未来への移行も「平坦ではない」との見通しを示していた。

4月には、AIによる失業への対応策として、連邦政府が支給する「普遍的高所得」にも言及した。新技術が生産コストを大幅に引き下げ、財やサービスが実質的にほぼ無制限に供給され得るとの構想を示す一方で、仕事の重要性が薄れれば、人々が人生の目的意識を失うおそれがあるとも警告している。

老後資金についても、マスク氏は従来とは異なる見解を示してきた。自身が想定する未来が実現すれば、10年後、20年後に備えるための貯蓄は「無意味になる」と発言。AIが生産、所得、医療、労働の構造を同時に変え得るとの認識を示した。

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