Amazonが、配送員向けスマートグラスで収集した画像を配送向け地図システム「Wellspring」の改善に活用しようとしている。利便性向上への期待がある一方で、配送先周辺の通行人や住宅などが撮影対象になり得ることから、プライバシー面の懸念も強まっている。
米ITメディアのThe Vergeは9月30日(現地時間)、Amazonが管理するスマートグラスについて、稼働中は配送員の視界に入る人物や車両、住宅などを撮影できると報じた。1回の通常シフトで数千枚規模の画像が記録される可能性があり、こうしたデータは生成AIを活用した地図システム「Wellspring」に利用される予定だという。
このスマートグラスは、配送先までの案内や荷物のスキャン、配達完了時の写真撮影などを想定したウェアラブル端末として開発された。配送員が配送先付近に車を止めると端末が起動し、移動ルートや住所、危険箇所などの情報を視界上に表示する仕組みだ。
過去18カ月では、500人超の配送員が現場で試験運用に参加し、累計配送件数は27万5000件を超えた。Amazonは年内にさらに5000台を追加投入し、2027年末までに配備台数を2万台超へ拡大する計画としている。
問題視されているのは、配送の過程で顧客本人だけでなく、周辺の通行人や近隣住宅なども撮影され得る点だ。Amazonのビラジ・チャタジー氏は、収集データは配送プロセスの改善にのみ使用し、監視が目的ではないと説明した。一方で、顧客に撮影を拒否する権利を設ける考えがあるかとの問いには、現時点では検討していないと答えたという。
Amazonは、画像を人が確認する前に顔や車のナンバープレートへ自動でぼかし処理を施す方針としている。ただ、画像の保存期間は明らかにしていない。The Vergeによると、自身や所有物が写り込んだ画像について、顧客が確認や削除を求めるための別途手続きも用意されていないという。裁判所の令状が出た場合には、当該画像が捜査当局に提供される可能性もある。
AmazonはWellspringを通じて、駐車位置や建物の出入り口、郵便室といった情報を学習させ、配送ルートの精度向上を進めている。配送効率化に向けたAI向けデータ収集が広がるなか、撮影範囲や保存期間、顧客同意のあり方を巡る議論は一段と強まりそうだ。