Teslaは29日、小口株主が取締役会の推奨に沿って議決権を自動行使できる制度について、米証券取引委員会(SEC)の承認を得た。SpaceXとの統合の可能性が取り沙汰される中、今後の株主投票にどのような影響を及ぼすかが焦点となる。
EV専門メディアのElectrekによると、SECが認めたのは、Teslaが申請していた「発行体による任意の小口株主議決プログラム」。株主が参加を選ぶと、解除するまで各株主総会で取締役会の推奨内容に沿って議決権が自動的に行使される仕組みだ。
参加者は、すべての議案に適用する方式か、委任状争奪戦を伴う取締役選任議案や、株主承認を要する合併・買収・事業売却案件を除外する方式かを選べる。一方で、取締役会方針に反対する設定や、独自の投票方針をあらかじめ指定することはできない。
もっとも、個別議案ごとに投票先を変更することは可能で、プログラムからの離脱にも費用はかからない。
Teslaは制度導入の理由として、小口株主の投票参加率の低さを挙げた。Broadridgeの資料では、2025年の委任状勧誘シーズンにおける小口株主の投票参加率は28%で、機関投資家の76.6%を大きく下回った。
Teslaはまた、直近2回の年次株主総会で、小口株主票の取り込みに向けた委任状勧誘費用として200万ドル超を投じたとしている。
実際、Teslaでは小口株主の票が重要議案の可否を左右した例がある。前年には、議決権行使助言会社のISSとGlass Lewisがイーロン・マスク氏の新たな報酬案に反対を推奨したが、同議案は小口株主の支持を背景に可決された。
同じ株主総会では、TeslaのxAI投資に関する株主提案に約10億6000万株が賛成し、約9億1600万株が反対した。一方で、4億7300万株超が棄権となり、Teslaは棄権票を反対票として扱ったため、議案は否決された。
Teslaはその後、今年1月にxAIへ20億ドルを投資した。さらに数週間後、SpaceXがxAIを買収し、Teslaの保有分はSpaceX株に転換された。
今回の承認は、Teslaが2026年の年次株主総会の日程をまだ決めていない段階で示された。Teslaは4月30日に提出した修正10-Kで、取締役会が総会日程を未定としており、委任状資料の提出も遅れる見通しだと説明している。前年の年次株主総会は11月6日に開催された。
マスク氏はここ数カ月、TeslaとSpaceXの統合の可能性を示唆してきた。SpaceXは6月の上場後、企業価値が約2兆ドルと評価され、Teslaの直近の時価総額は約1兆4700億ドルだった。
マスク氏はTesla株の約20%を保有し、SpaceXでは80%超の議決権を握っている。
2025年のCEO業績報酬案には、支配権の変更時に事業目標を外し、時価総額の条件だけで一部要件を満たせる条項も盛り込まれた。通常は、各報酬区分について、2兆ドルから始まる時価総額目標に加え、車両納入、Optimusロボット、ロボタクシーなどの事業目標の達成が必要となる。
ただ、支配権が変更された場合は事業目標が除外され、取引価格などを基準に時価総額のみで条件充足の可否が判定される。
このため、SpaceXがTeslaを企業価値2兆ドル規模で買収した場合、マスク氏はロボタクシーなどの事業目標を達成しなくても、最初の報酬区分を確保できる可能性があるとの見方が出ている。Teslaの発行済み株式数約39億5000万株を前提にすると、買収価格は1株当たり約506ドルとなり、先週の株価を約36%上回る水準だ。
SpaceXとの取引が進めば、株主投票が必要になる。このため、取締役会推奨に沿って自動的に議決権が行使される小口株主の持ち分は、今後の重要な変数となる可能性がある。
もっとも、現時点で今回の制度承認とSpaceX関連取引を直接結び付ける材料は確認されていない。