米上院で暗号資産の市場構造を定める「クラリティ法案」が審議入りに必要な支持を得られず、米国の暗号資産規制を巡る主導権が議会から規制当局へ移りつつあるとの見方が強まっている。
ブロックチェーンメディアのDecryptによると、上院は現地時間19日、同法案の審議入りに向けた手続きを49対50で否決した。これを受け、市場の関心は議会での包括立法よりも、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の対応に向かっている。
採決では民主党がそろって反対票を投じたほか、共和党からもスーザン・コリンズ、ジョシュ・ホーリー、ジェリー・モランの各上院議員が反対に回った。トム・ティリス上院議員は当初賛成したものの、その後反対に転じた。再協議の余地を残すための判断とみられている。
採決後は、法案処理を巡る責任の所在を巡って与野党の応酬も強まった。共和党は、民主党に当初から法案を進める意思がなかったと批判。これに対し民主党は、交渉がまとまる前に採決を急いだと反論した。法案設計に関わったシンシア・ルミス上院議員は、民主党は消費者保護と米国の主導的地位の維持に真剣ではなかったと述べた。
一方で、交渉に関わる民主党議員らは、法案が完全に消えたわけではないとの立場を示している。アンジェラ・オルスブルックス上院議員はCrypto in Americaのインタビューで「クラリティ法案は消えない」と語り、7000万人超の米国人が十分に規制されていない産業に関わっているとして、ルール整備の必要性を強調した。交渉に参加した民主党議員6人も、超党派協議を継続する考えを示した。
ただ、業界の視線はすでに議会より規制当局に向かっている。Solana Policy Instituteのクリスティン・スミス氏は、現時点では規制当局によるガイダンスの方が現実的な選択肢だとの見方を示した。
実際、当局側も動きを見せている。SECは17日、トークン化された米国株のオンチェーン取引を可能にする措置を公表した。業界では、議会立法の遅れを受け、規制当局が市場ルール整備を先行させる兆しと受け止められている。
CFTCも独自の対応を進めている。委員会の実務陣は、受動的なソフトウェア提供者に対して厳しい姿勢を示したほか、暗号資産市場全体を対象とする広範な規則制定案をホワイトハウスの審査に付した。もっとも、提案の詳細はまだ公表されていない。
今回の採決結果は、単に1本の法案が前進しなかったというだけではない。ワシントンで暗号資産規制の軸足がどこに移るのかを示す材料になった。包括立法はなお再協議の可能性を残すが、当面市場が向き合うルールは、SECやCFTCによるガイダンスや個別の例外措置が中心となる公算が大きい。