Teslaがヒューマノイドロボット「Optimus」の初期生産に乗り出した。量産ラインの整備は進んでいるものの、産業現場への本格投入に向けては、手の精密動作や耐久性、安全性、AIの学習データ確保など解決すべき課題が残る。イーロン・マスク氏は、外部顧客への引き渡し時期を2027年末とした。
22日(米国時間)、Teslaによると、マスク氏は第3四半期決算の説明で、カリフォルニア州フリーモント工場の量産ラインでOptimusの生産を開始したと明らかにした。
Teslaは、このラインで製造したOptimusについて、量産品質に達した初の製品だと説明した。年100万台の生産を目標に設計したラインについても、設備の大半を設置済みだという。
ただ、週2万台体制の確立にはなお1年以上を要する見通しだ。設計や一部部品の改良も続いており、生産開始がそのまま大規模供給や実運用の準備完了を意味するわけではない。
マスク氏は、外部顧客への引き渡しに先立ち、AIや電気機械設計、安全性、信頼性、耐久性の改善が必要だと述べた。中でも、人間の手のように繊細な作業に対応しながら、繰り返し使用にも耐えるハンド機構が大きな課題だとしている。
ロボットは人の皮膚のように自己修復できないため、長期間の使用でも摩耗を抑えられる設計が求められるという。
AIの学習データ確保も課題の一つだ。Tesla車とは異なり、Optimusには大規模な実運用の蓄積がなく、作業データを十分に集めにくい。
Teslaは1万〜2万台のロボットを製造し、「Optimus Academy」で作業を反復学習させ、そのデータをAIの改良に活用する構想を進めている。2027年4月ごろにはAI5チップを搭載する計画だ。
マスク氏は、今後1〜2カ月以内に、事前のプログラミングなしに作業をこなすロボットの映像も公開すると予告した。
初期の用途は、家庭向けより産業用途が中心となる見通しだ。マスク氏は、危険作業や反復作業、24時間稼働が求められる業務を優先適用の対象に挙げた。
一方、カリフォルニア大学バークレー校のケン・ゴールドバーグ教授は、ロボットのソフトウェアや自己学習能力が実環境で十分に機能するかは不透明だと指摘した。デモ映像だけでは、現場で求められる安定した性能を見極めにくいという。
商用化のスケジュールも、従来の目標から後ろ倒しとなった。マスク氏はこれまで、2025年の社内活用と2026年の外部企業向け供給の可能性に言及していたが、今回は外部顧客への引き渡し時期を2027年末と示した。
競合各社も、生産と現場投入に向けた動きを進めている。中国のXpengは、ヒューマノイドロボット「Iron」を2026年末に量産し、2027年上半期に引き渡す計画だ。
Boston Dynamicsは電動式「Atlas」の生産を開始し、現代自動車の工場で組み立て作業を学習させている。
Optimusの生産開始は、Teslaが量産体制の構築段階に入ったことを示す。ただ、実用化の成否は生産台数だけでは決まらない。手の精密動作と耐久性、新たな作業に対応できるAI、現場で継続稼働できる信頼性をどこまで確保できるかが問われる。