全固体電池のイメージ(写真:Shutterstock)

全固体電池の商用化を巡る競争が再び熱を帯びている。電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵システム向けの次世代電池として期待が高まる一方、量産技術の確立とコスト低減が普及のカギを握る。QuantumScape、Toyota、CATLなどが開発を急ぐ中、初期の有望市場として航空・軍需分野を挙げる見方も出ている。

全固体電池は、従来のリチウムイオン電池で使われる液体電解質の代わりに、固体セラミックや高分子材料を用いるのが特徴だ。発火リスクを抑えやすく、高エネルギー密度や充電時間の短縮が見込めることから、次世代電池の本命候補として注目されている。

一方で、商用化に向けた技術課題はなお多い。代表例がデンドライト対策だ。リチウム金属負極を採用する電池では、充電時に枝状のリチウム突起が成長し、固体電解質を突き破ると内部短絡を引き起こす恐れがある。固体電解質は物理的な障壁になると期待されてきたが、実際には亀裂に沿ってデンドライトが成長することが分かっている。

量産面のハードルも高い。全固体電池の製造では、欠陥の少ないセラミックシートを大量に安定生産する必要がある。電解質材料によっては水分と反応しやすいため、製造工程全体で厳格な湿度管理も欠かせない。業界では、全固体電池の価格が既存のリチウムイオン電池パック並みに近づく時期は、2030年代半ばになるとの見方が大勢だ。

こうした中、米全固体電池スタートアップのQuantumScapeは、量産に向けた製造技術の確立に自信を示している。ビル・ゲイツ氏が出資する同社は、リチウム金属と両立できるセラミック系固体電解質の開発を進め、デンドライト対策に注力してきた。

QuantumScapeの共同創業者で最高技術責任者(CTO)のティム・ホーム氏は、「私たちはこの10年間、ほかの要件も満たせるよう、この材料の加工方法を磨いてきた」と述べた。

同社は2025年、全固体電池向けセラミック電解質を高速で生産し、熱処理する独自プロセスを公開した。ホーム氏は「セラミックス分野では前例のない方式だ」と説明している。従来は数日を要した工程を数分まで短縮したというが、このスピードを大規模量産でも維持できるかが今後の焦点となる。

完成車メーカーや電池大手も開発を急ぐ。Toyotaは2010年から全固体電池の研究を進めており、出光興産とパイロット生産施設の整備に取り組んでいる。Toyotaは、全固体電池を搭載した車両について、10分未満の充電で最大745マイルの走行が可能になるとの見通しを示している。

中国の電池大手CATLも研究開発を加速させている。CATLは2024年、全固体電池関連の研究プログラムに約26億ドル(約3900億円)を投じたとされる。Mercedes-Benzも昨年秋、EQSセダンに全固体電池を搭載して試験走行を実施し、750マイル走行後も追加走行が可能な余力があったと伝えられた。ただし、各社で採用技術や試験条件が異なるため、航続距離の数値だけを単純比較することはできない。

初期市場はEV以外になる可能性もある。車載電池は市場規模こそ大きいが、電池コストが高止まりすれば車両価格の上昇に直結する。電力網向けのエネルギー貯蔵システムも、データセンターの電力需要拡大を背景に成長が見込まれるものの、既存電池より高価な新技術を採用するには、コストと寿命の両面で明確な優位性が求められる。長時間の電力供給性能を示せれば、採用余地は広がりそうだ。

このため一部企業は、必要数量が限られ、コスト負担を吸収しやすい航空・軍需分野を初期の有望市場として検討している。カリフォルニア州のSolid Energy Systemsやアリゾナ州のSion Powerが、その候補として挙がっている。

BloombergNEFで電池技術とサプライチェーン分析を統括するエベリナ・ストイコウ氏は、「これらの分野はコスト感応度が低く、必要量も比較的少ない」と指摘。その上で、「概念実証を進め、パイロットプラントの資金を確保しながら、最終的に規模を拡大していくには適した進め方だ」と語った。

全固体電池の開発は、材料やセル設計の検証段階から、実際の生産工程の確立と初期需要の開拓という局面に移りつつある。実験室で性能を示すことと、一定品質の電池を安定して量産することの間には大きな隔たりがある。商用化競争の行方は、歩留まりの改善と製造コストの引き下げを通じて、既存のリチウムイオン電池に対抗できる水準まで持ち込めるかにかかっている。

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