写真=Helion

Helionは22日、核融合発電設備向けの先端半導体開発と生産能力の強化に向け、米連邦政府から1億7500万ドル(約263億円)の資金支援を確保したと発表した。電力変換時の損失を抑え、核融合発電の効率向上と米国内の先端パワー半導体サプライチェーン構築につなげる。

米ITメディアのTechCrunchによると、同社はこの資金を活用し、核融合設備に必要な高電圧・パルス半導体の研究開発と製造能力を強化する。支援は、米半導体産業の研究開発と生産基盤の拡充を目的とするCHIPS法に基づき、3年間にわたって実施される。

狙いは、電力変換ロスの圧縮にある。現在の関連装置では、流れる電力の約5~10%が失われるという。共同創業者兼CEOのデイビッド・カトルリー氏は、この損失を半減できれば、核融合システムの出力を倍増できる可能性があると説明した。個々の損失は小さく見えても、複雑なシステム全体では影響が大きくなるとしている。

Helionは2028年までに初の発電所「オリオン」を完成させ、Microsoftに電力を供給する目標を掲げている。今回の支援金は、核融合設備向け半導体モジュールの自動化生産のほか、パッケージングや試験体制の整備に充てる方針だ。

一方で、研究開発の成果がオリオンの初期稼働に直ちに反映されるわけではない。カトルリー氏は、連邦契約の交渉に数カ月かかる可能性があると述べた。Helionは今回の投資を通じ、将来の発電所の効率改善と電力市場での競争力向上を目指す。

生産基盤は米国内に構築する。Helionはワシントン州に新たな生産ラインを整備する計画で、同施設は核融合分野に加え、製造業、廃水処理、医療、防衛産業向けの特定半導体を米国で初めて生産する拠点になるとしている。

同社はワシントン州で、半導体と先端パッケージングの研究開発に1億ドル超(約150億円)を投じる。さらに約8000万ドル(約120億円)をGlobalFoundriesとの協業に充て、バーモント州で先端半導体の装置、設計、プロセス開発を進める計画だ。

GlobalFoundriesも別途、パワーエレクトロニクス分野で広く使われる窒化ガリウム(GaN)半導体の生産能力高度化に向け、米連邦政府から8000万ドル超(約120億円)の支援を受けた。

Helionは連邦資金とは別に、5000万ドル(約75億円)の新規民間投資も確保したと公表した。投資家は明らかにしていない。今回の調達を含む累計調達額は32億ドル(約4800億円)を超え、核融合スタートアップでは第2位の規模になるという。

半導体の効率は、Helionが採用する核融合発電方式とも密接に関わる。一般的な発電方式は、核融合反応で生じる熱で蒸気をつくり、タービンを回して発電する。これに対しHelionは、核融合の過程で生じたエネルギーを直接回収し、電力に変換する方式の開発を進めている。

同社の直接エネルギー変換は、磁場でプラズマを加速・圧縮し、核融合反応で発生したエネルギーを磁石やコンデンサーなどを通じて電力に変える仕組みだ。この過程では、電力を高速で供給し、効率よく回収するための半導体技術が重要になる。

カトルリー氏は、現代の半導体は核融合システムへの電力供給と、その高効率な回収を支える中核基盤だと強調した。電力変換時の損失を減らすことが、システム全体の効率改善につながるとの見方を示している。

今回開発・生産するパワー半導体は、核融合以外の産業への展開も見込む。足元の主な需要先は電気自動車で、民生用電子機器や防衛分野への応用可能性もある。ただ、分野ごとに求められる電力規模や出力要件は異なる。

米商務省で半導体投資・イノベーションを担当するビル・プロイエンホーファー氏は、今回の支援について、防衛産業や送電網、先端エネルギー生産などの主要分野で、電力の変換と供給を担う技術の基盤強化につながると述べた。

Helionは、防衛分野への展開可能性よりも、米国内のエネルギー供給とエネルギー安全保障を優先課題に位置付ける。今回の投資は、核融合発電の商業化を後押しするとともに、発電設備の効率向上と重要半導体の米国内生産基盤の確保を進める取り組みとなる。

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