写真=Tesla

Teslaは、自動運転システム「Full Self-Driving(FSD)」の課題改善に向け、自社の地図・ナビゲーションシステムの開発を進めている。速度制限の認識や駐車、経路案内の精度向上を狙う。

Teslaは22日、2026年7〜9月期の決算説明会で、この取り組みを明らかにした。これまで同社は、地図への依存は自動運転システムを脆弱にするとする立場を示してきたが、今回の方針はそれとは対照的だ。

株主との質疑応答では、個人投資家から、FSDが速度制限の認識や駐車、一般的な経路選択に課題を抱えているとして、外部地図ではなく自社地図を構築しない理由を問う声が上がった。

TeslaのAI担当バイスプレジデント、アショク・エルスワミ氏は、「外部企業の地図に依存すべきではない」と説明。Tesla車両全体が収集したデータをもとに、自社のAI地図・ナビゲーション基盤を構築していると述べた。システムは、ドライバーごとの嗜好学習や音声コマンドへの対応も視野に入れているという。

同氏によると、この技術はまずFSD v15で出発地と到着地の処理を担い、その後数カ月かけて、ナビゲーションや駐車、目的地設定などにも対応範囲を広げる見通しだ。

Teslaは過去にも自社地図の開発に取り組んでいた。2015年にAutopilotを投入した当時には、顧客車両から集めたデータを活用し、一般的なナビゲーションより100倍高精度の地図を構築しているとしていた。

一方、2019年のAutonomy Dayでは、イーロン・マスク氏が高精度の車線地図に依存する方式について、「とてつもない誤り」で「非常に悪いアイデア」だと批判。カメラとAIだけでどこでも走行できるアプローチを強調していた。

今回の取り組みは、FSDが抱える道路環境の認識精度の課題を補う狙いがある。なかでも速度制限標識の認識は、これまでも問題点としてたびたび指摘されてきた。

ベルギーの道路安全団体が先月、ブリュッセル市内の制限速度30km/h区域で実施した試験では、FSDは走行区間の55%で制限速度を超過し、平均速度は44km/hだった。多くの区間で車載画面に制限速度が50km/hと表示されていたことも、要因の一つとされた。

米国道路交通安全局(NHTSA)も、Teslaのロボタクシーが実運用中のスクールゾーンで速度超過しているとの指摘を巡り、Model YとCybercabの計約1000台を対象とした調査着手を検討している。

今回の計画は、Tesla車両が走行データの収集だけでなく、自動運転向け地図の構築にも活用されることを意味する。車両から集めた情報を自社地図に反映し、車両全体の走行性能向上につなげる考えだ。

この手法は、サービス開始前にセンサー搭載車両で都市の地図を作成し、運行しながら更新を続けるWaymoのアプローチに近い。大きな違いは、車両にLiDARを搭載しているかどうかにある。

Teslaのロボタクシーも、都市ごとに限定されたジオフェンス区域で運用されている。現時点でTeslaはセンチメートル級の高精度地図の構築には言及していないが、車両群が蓄積するデータによって地図を継続的に高精度化する可能性がある。

Teslaは、ドライバーの介入が不要なFSDの適用時期を2027年4〜6月期に後ろ倒しし、適用対象も一般顧客の全車両ではなく、ロボタクシーの車両群に限定した。地図依存を批判してきたTeslaが自社地図の導入に踏み切ることで、カメラとAIだけで汎用的な自動運転を実現するという従来構想と、実際の運用との隔たりが改めて浮き彫りになっている。

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