Teslaは、顧客が保有する車両への無監督FSD(Full Self-Driving)について、2027年4〜6月の導入を目指す方針を示した。ただし、利用形態は個人所有車が任意の目的地まで自由に無監督走行するものではない。Teslaが運営するロボタクシーネットワークに車両を組み込む形が前提となる。
米EVメディアのElectrekが21日(現地時間)に報じた。TeslaでAI部門を統括するアショク・エルスワミ氏は、2026年7〜9月期の決算説明会で、顧客車両向け無監督FSDの導入時期について2027年4〜6月を目標にしていると説明した。この質問には個人株主の関心が高く、約110万株分の賛同が集まったという。
もっとも、今回示された計画は、一般に想起される個人向けの全面自動運転とは異なる。エルスワミ氏は、初期段階ではソフトウェア更新だけで個人車両がどこへでも無監督で走行できるようになるわけではないと述べた。
その代わりに示したのが、車両オーナーが自車をTesla管理下のロボタクシーフリートに組み込むモデルだ。顧客車両の無監督走行は、Teslaのロボタクシーがすでに運行している地域に限られる。車両を所有していても、Teslaが定める運行エリアや条件の外で無監督FSDを自由に使えるわけではない。
現在、Teslaのロボタクシーは米国の6つの大都市圏でサービスを展開している。ただ、実際の走行エリアは都市全域ではなく一部区域に限られる。マイアミでは、ウェストマイアミ、ドラル、スイートウォーター周辺の一部区間が中心だ。
2026年7月にサービスを始めたオーランドとタンパでも、限定された運行エリアを前提に運用している。走行条件にも制約があり、ロボタクシーは一般道中心で、高速道路の利用は大半を避けるほか、難易度の高い区間も制限している。
このため、顧客車両に無監督FSDが適用されたとしても、当初は利用できる道路や地域が限られる可能性が高い。
規制面の壁も残る。カリフォルニア州ベイエリアで運営するTeslaのサービスは、なお無監督走行には至っていない。州の規定で安全運転者の同乗が求められているためだ。
報道によると、Teslaはレベル2を超える自動運転システムに関し、カリフォルニア州車両管理局(DMV)に必要なデータを提出していないという。
ロボタクシー事業そのものの運用規模も課題だ。Teslaは、2026年7〜9月期末時点でロボタクシーの累計無監督走行距離が約200万マイルに達したと公表した。サイバーキャブがオースティンのロボタクシーフリートに加わってから1カ月で集計した数値としている。
一方、公道を走る完全無人のTesla車両は、依然として台数が限られるとの見方がある。Electrekが紹介した今春の第三者追跡データでは、完全無人車両は数十台規模にとどまるとされた。
大規模な自動運転サービスの拡大を強調してきたイーロン・マスクCEOの構想と、足元の実運用との間にはなお隔たりがある、という見方だ。
今回の説明は、TeslaがこれまでFSD購入者に示してきた見通しとも対比される。Teslaは長年、ソフトウェア更新によって最終的にはさまざまな道路環境で車両が自律走行できるようになるとの期待を示してきた。
マスク氏は2025年7月、投資家に対し、無監督FSDは同年末までに特定地域で個人向けに提供される可能性があると述べていた。2024年にも、翌年に無監督自動運転が実現しなければ驚きだと発言している。
車両ハードウェアも不確定要素となる。HW3(ハードウェア3)搭載車を購入した一部顧客は、搭載コンピューターでは無監督FSDを動かせないとの案内を受けたとされる。
ただ、既存車向けの具体的なハードウェア更新計画は、なお明確になっていない。無監督FSDの導入が遅れれば、既存購入者の不満が強まる可能性もある。
結局のところ、Teslaが示した2027年4〜6月の計画は、すべての顧客が自車で自由に完全自動運転を利用できる段階を意味するものではない。むしろ、顧客車両をTeslaの管理するロボタクシーネットワークに組み込む初期モデルに近い。
実用化に向けては、運行エリアの拡大、安全性の検証、地域ごとの規制対応、既存車のハードウェア互換性といった課題の解消が欠かせない。今後は、Teslaがロボタクシーの運行範囲をどこまで拡大できるか、また顧客車両向けの無監督FSDを限定サービスから実用的な個人移動手段へ広げられるかが焦点となる。