Bitcoinは米インフレ指標の上振れを受けて下押しされたものの、8万ドルの節目は維持した。XRPも1.3ドル台で底堅く推移している。一方で、相場の不安定さとは別に、USDCをはじめとするステーブルコインは決済インフラとしての実装が進んでおり、中国の暗号資産没収手続きや韓国の課税を巡る議論も新たな注目材料に浮上している。
今後の市場では、23日のXRPL改定案の適用可能日、米国の10月PMI速報、27〜29日のRipple Swell、27〜28日のFOMCが焦点となる。Bitcoinが8万7000ドルを上回る水準を明確に回復するには、金利見通しを巡る不透明感の後退に加え、上値に並ぶ売り圧力の吸収が必要になりそうだ。逆に、政策金利の据え置き観測が後退するか、米株の調整が深まれば、7万5000ドル水準を意識する展開が再び取り沙汰される可能性もある。
足元の市場を揺らしたのは米物価指標だ。米労働統計局が14日に発表した9月のCPIは前年同月比3.7%上昇と、市場予想の3.6%を上回った。食品とエネルギーを除くコアCPIも2.6%と、予想の2.5%を上回った。Bitcoinは発表直後に約2%下落し、8万2000ドル台を割り込んだ。さらに15日に公表された9月のPPIも強い内容となり、日本時間では一時1250万円台まで下落した。
それでも8万ドル台は維持した。19日午前時点では8万2341ドルで推移し、時価総額シェアは60.24%だった。CNBCでジム・クレイマー氏が警戒感を示したように、インフレや金利を巡る不透明感が重なるなか、14日の米株式市場ではS&P500が1.1%安、ナスダックが1.9%安となった。暗号資産を含むリスク資産全般に売りが広がった1週間だった。
次の焦点は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策だ。CoinPostが引用したbitbankのアナリストによると、フェデラルファンド金利先物市場では10月FOMCの据え置き確率を約70%織り込んでいる。一方、CME FedWatchを引用した15日付の報道では、10月27〜28日のFOMCで利上げ確率が約54%に上昇したとの見方も出た。参照時点やデータソースが異なるため単純比較はできないが、市場の見方がなお定まっていないことは確かだ。
高インフレがBitcoinに追い風となるかを巡っては、CryptoSlateが資金コストの観点から整理している。3カ月物米国債利回りが4.26%の環境では、1万ドルを現金でBitcoinに振り向けた場合、年426ドル分の機会費用が生じる。さらに年8%で1万ドルを借り、自己資金と合わせて2万ドル分を購入すれば、利払いだけで年800ドルの負担となる。国債利回りとの比較まで含めると、損益分岐には約6.13%の上昇が必要になる計算だ。同メディアは、インフレがBitcoin保有の論拠を強める一方、高い調達コストがその有効期間を縮めると指摘した。物価上昇がそのままBitcoin高につながるわけではない、という見立てである。
XRPは今週も個人投資家の関心を集めた。価格は1.30〜1.34ドルの狭いレンジで推移し、1.25ドル近辺のサポートを維持した。Google Trendsによる世界の検索人気度指数は13となり、価格が3.65ドルに向けて上昇していた2025年7月の高水準と比べて90%超低下した。検索関心が大きく後退しても価格が崩れなかった点については、デリバティブ市場で過度なレバレッジが相応に解消されたことを示すとの見方が出ている。
価格変動が続く一方で、決済インフラの整備は進んでいる。Cointelegraphがシンガポールのイベントで伝えた業界関係者の発言を総合すると、ステーブルコインの時価総額は3060億ドル(約45兆9000億円)まで拡大した。ただ、日常決済への浸透はなお課題とされる。EtherFiのマイク・シラガゼCEOは、送金用途にとどまらず、生活費や請求書の支払いで実際に使われることが普及のカギになると指摘した。シンガポールではUSDCを保有していても、請求書の支払いには依然として現地通貨が必要だという。
Mercuryoのアシナ・バゲラ最高顧客責任者は、決済体験について「Apple Payのようにアプリの外に出ず完結すべきだ」と述べた。トークン化資産市場でも、発行の増加に対して投資需要と流動性の拡大が追いついていないとの指摘が出ている。ベンチャー投資の回収環境についても、流動性が大型暗号資産に偏っているとの見方が示された。
こうした課題の解消に向けた動きも続く。Circleのジェレミー・アレアCEOは、バンコクで開かれたIMF・世界銀行会合の期間中にReutersの取材に応じ、東南アジア、中南米、アフリカ、中東の約40の開発途上市場に進出すると明らかにした。Bernsteinの分析を引用した報道によると、USDCの調整後ベースのステーブルコイン取引量シェアは、2025年の約40%から今年は60%超に拡大し、USDTを上回ったという。
中国も市場の変数として再び浮上している。天津第2中級人民法院は13日、大型投資詐欺事件に関連して差し押さえた暗号資産の没収手続きに入ったと発表した。対象資産は約50億ドル(約7500億円)規模で、Bitcoin 6万1896BTCのほか、XRP、Dogecoin、Bitcoin Cashなどを含む。
これらの資産は、2014〜2017年に虚偽の投資商品で10万2000人超から約403億8000万人民元を集めたチェン・ジーミン事件に由来する。チェン・ジーミンは英国で資金洗浄罪により懲役11年8カ月の判決を受けた。英国高等法院は12日、被害者による返還請求には中国法を適用すべきだと判断したが、所有権自体が確定したわけではない。利害関係者の参加期間は6カ月で、元本ベースの賠償にとどめるのか、価格上昇分まで認めるのかは未定のままだ。
Binance創業者のチャンポン・ジャオ氏を巡る論争もあった。Solanaは週初めに上海でオフィスを開設し、大規模な広告展開を進めたが、上海のShangri-La Hotelで予定されていたイベントは16日に延期された。Solana Foundationのリリー・リウ社長は、登録者数が突然4倍に増え、当局に事前申告した人数を上回ったためだと説明した。チャンポン・ジャオ氏は、Solanaの上海での広告が中国の規制緩和を示すシグナルになり得ると発言。その後、自身の投稿が広告撤去につながったのではないかとの指摘に対し、関与を否定した。
韓国では、暗号資産課税の施行時期を巡る議論が新たな局面に入った。パク・ミンギュ議員は、デジタル資産所得課税の施行日を、国家間で取引情報の交換が初めて行われた年から2年が経過した後の1月1日に改める所得税法改正案を発議する予定だ。現行法では2027年1月施行だが、OECDの暗号資産自動情報交換枠組み(CARF)に基づく情報交換は2027年開始、米国の参加は2029年予定とされており、実質的に2029年課税を念頭に置いた提案と受け止められている。
与党から猶予法案が出るのは今回が初めてだという。海外取引所の情報把握に限界があるなかで課税を始めれば、国内取引所の利用者に負担が偏ることや、先にデジタル資産基本法を整備すべきことが理由として挙げられた。野党でも、ソン・オンソク議員が課税条項の削除を、キム・ジェソプ議員が2030年1月1日まで3年間延期する案をそれぞれ示したほか、キム・サンフン議員やチョン・ソングク議員らも施行時期の先送りを提案している。
一方、政府は現行法に基づく施行を前提に準備を進めている。国税庁は取引所とシステム構築を協議しており、課税基準に関する告示の準備も進行中だ。
監督体制の見直しも論点になっている。イ・チャンジン金融監督院長は19日、国会政務委員会の国政監査で、イ・ガンイル議員の質疑に対し、金融委員会、金融監督院、金融情報分析院(FIU)、韓国銀行が共同で監督する体制について、未公表のデジタル資産基本法の政府案に「非常に完璧な水準ではないが、一定部分反映されている」と述べた。政府案が公表されれば、機関ごとの権限配分やFIUと金融監督院の連携のあり方が主要な争点になりそうだ。