韓国のゲーム各社が、自社のヒットIPを映画やドラマ、アニメへ展開する動きを強めている。映像作品を通じて新規ユーザーを取り込み、ゲーム本体や関連商品の売上拡大につなげる狙いだ。海外では映像化をきっかけに原作ゲームの利用者や課金が大きく伸びた事例もある一方、提携が実際の制作や興行成績まで保証するわけではなく、収益化の見通しが課題となる。
◆Nexon、Dev Sistersが海外制作会社と提携
ゲーム業界によると、Nexonはこのほど、米Chernin Entertainmentと「Arc Raiders」「THE FINALS」の映画・テレビコンテンツ制作に向けたパートナーシップを結んだ。
両作品はNexon子会社のEmbark Studiosが開発した。「Arc Raiders」は昨年10月の発売以降、グローバル累計販売本数が1600万本を超えた。「THE FINALS」も累計ユーザー数3000万人以上を記録している。
Nexonは、両タイトルの世界観を映像作品へ広げることで、既存のゲームユーザー以外にもIPの裾野を広げたい考えだ。「Arc Raiders」は機械生命体に支配された未来の地球、「THE FINALS」は架空の戦闘ゲームショーを舞台にしている。
「Arc Raiders」の総括プロデューサー、アレクサンデル・グレンダール氏もGamesRadarのインタビューで、作品世界が多様な物語を展開できる土台になるとの期待を示した。ゲームプレイ中心のタイトルから、キャラクターやストーリーを映像へ広げる可能性に着目した格好だ。
Dev Sistersも12日、ハリウッドのBig Shot Picturesと「CookieRun」の長編アニメ映画制作に向けたパートナーシップを締結した。CookieRun IPの誕生20周年に当たる2029年の世界劇場公開を目標に掲げている。
「CookieRun」は2009年の第1作発売以降、さまざまなジャンルへ展開してきた。Dev Sistersによると、累計ユーザー数は世界248の国・地域で3億人を超える。昨年のグローバル商品売上に占める米国比率は65%に達し、北米はCookieRun IP全体でも最大市場だという。
Dev Sistersは、既存のゲームユーザーやグッズ購入層を基盤にアニメの観客層を広げ、その関心を再びゲームや関連商品へ還流させる考えだ。
両社とも、映像制作は海外の専門会社が主導し、原作を持つゲーム会社がコンテンツの方向性に関与する形をとる。ゲーム会社が世界観やIPの特性を管理しつつ、海外制作会社のノウハウを取り込む構図といえる。
もっとも、IPの成長段階によって狙いは異なる。Nexonは比較的新しいヒット作を長期フランチャイズへ育てる狙いがあるのに対し、Dev Sistersは17年にわたり積み上げてきたCookieRunの認知度とファンダムを生かし、既存事業を映像分野へ広げようとしている。
◆映像化で原作ゲームに波及 「Fallout」はMAU490%増
ゲーム各社が映像化に注力する背景には、作品単体の収益だけでなく、原作ゲームへの波及効果が期待できる点がある。
市場調査会社Ampere Analysisによると、2024年にAmazon Prime Videoでドラマ「Fallout」が公開された後、原作ゲームシリーズの月間アクティブユーザー数(MAU)は490%増加した。ドラマ公開をきっかけにゲームプレイが活性化した1400万人のうち、80%は初めて同シリーズに触れたユーザーだったという。
映画でも同様の効果が確認されている。Sensor Towerによれば、昨年「Minecraft Movie」の公開後、原作ゲームのモバイルにおけるアプリ内課金売上は44%、コンソール版の販売本数は36%増加した。アクティブユーザーも、モバイルで9%、コンソールで41%それぞれ増えた。
近年は、映像作品の公開とゲームのアップデートを直接連動させる動きも出ている。
ポーランドのゲーム会社CD Projekt Redは20日、Netflixでアニメ「Cyberpunk: Edgerunners 2」の配信を始めた。22日には、原作ゲーム「Cyberpunk 2077」に関連コンテンツを追加する無料アップデートを実施する予定だ。
映像作品で高まった関心を、実際のゲームプレイや課金につなげるために新コンテンツを投入する手法といえる。
こうした事例は、映像化が単なる新規ユーザー獲得にとどまらず、既存ゲームの寿命を延ばし、関連商品の消費拡大にもつながり得ることを示している。
◆提携だけでは成功せず 制作実現と採算性が焦点
ただ、映像化への期待が大きいからといって、ゲームの知名度やファンダムがそのまま映画やドラマのヒットを保証するわけではない。
代表例が、2024年公開のゲーム原作映画「Borderlands」だ。映画興行情報サイトThe Numbersによると、製作費は約1億1500万ドル(約173億円)だったが、世界の劇場売上は約3294万ドル(約49億円)にとどまった。興行収入は製作費の3分の1にも届かなかった。
韓国でも、Smilegateが「Crossfire」IPを活用した中国ドラマ「Chuan Yue Huo Xian」で累計再生数20億回超を記録した一方、別途進めていた映画化プロジェクトはなお公開に至っていない。
ゲームで人気を得たキャラクターや世界観であっても、新規の観客に伝わる物語と、映像作品としての完成度が求められる。その意味で、映像化はゲームとは別の挑戦となる。
NexonとChernin Entertainmentの協業も、現時点では映画・テレビ作品の企画段階にある。Dev Sistersについても、Big Shot Picturesが「CookieRun」の映画化権に関するオプション契約を確保した段階で、実際の制作や公開が決まったわけではない。
製作費の分担や収益配分など具体的な条件も公表されておらず、現時点で収益性を判断するのは早い。
最終的に映像化事業の成否は、作品自体の興行だけでなく、原作ゲームや関連事業にどこまで効果を及ぼせるかに左右される。NexonとDev Sistersにとっても、作品公開後にユーザー獲得や売上拡大といった実質的な成果へ結びつけられるかが焦点となる。
業界関係者は「ゲームIPの映像化には、既存タイトルを改めて訴求し、新たなユーザーを獲得できる意義がある」としたうえで、「ただし、原作ゲームの人気が映像作品の興行まで保証するわけではない。作品の完成度に加え、公開後にゲームのユーザー数や売上がどう変化するかを見極める必要がある」と話した。