EUが社用車のEVシフトを促し、あわせて補助金や税制優遇の対象を欧州生産車に絞った場合、2030年までに最大34万4000人の雇用増が見込める――。欧州の環境団体T&Eが公表した分析で、こうした試算が示された。EV需要の拡大が、自動車やバッテリー産業の競争力強化につながる可能性があるとしている。
CleanTechnicaが21日付で報じたところによると、欧州運輸・環境連合(T&E)は、Fraunhoferシステム・イノベーション研究所(ISI)に委託した、いわゆる「クリーン企業車両規則(CCVR)」の経済効果に関する分析を公表した。
欧州委員会が提案した同規則では、2030年までに大企業の新規登録車の少なくとも45%をゼロエミッション車に切り替える目標を掲げる。プラグインハイブリッド車などの低排出車まで対象を広げた場合、比率は69%となる。
さらに、2028年以降は、社用車向けの税制優遇や補助金などの財政支援を、欧州で生産された低排出車・ゼロエミッション車に限定する内容も盛り込まれた。
分析では、慎重な前提でも約19万6000人の雇用増が見込まれるとした。移行が加速し、2030年時点で社用新車に占めるEV比率が69%まで高まるシナリオでは、雇用増は34万4000人に達すると試算した。
このシナリオでは、EU域内の付加価値は従来見通しの280億ユーロから480億ユーロに拡大する見通しだ。関連投資も200億ユーロから380億ユーロに増えるとしている。
国別では、ドイツで約13万4000人、ポーランドで3万8500人の雇用増が見込まれる。ポーランドのバッテリーセル生産は、2030年までに31GWhから81GWhへ拡大する可能性があるという。
企業別では、構造改革を進めるVolkswagenでも、政策効果が大きいシナリオで最大5万6300人の直接雇用効果が見込まれるとの分析結果が示された。
一方、T&Eは、欧州生産EVに対する支援条件を緩めたり、導入を遅らせたりすれば、自動車メーカーの域内生産を促すインセンティブが弱まる可能性があると警告した。
もっとも、今回の数値は政策実施を前提とした経済モデルによる推計であり、実際の雇用や投資の規模は、規制の最終的な内容や各社の生産戦略によって変動する可能性がある。