Appleは10月21日(現地時間)、6G時代を見据えた次世代セルラーモデム開発人材の募集を始めた。対象は「6Gセルラーモデムシステムエンジニア」で、求人では無線通信分野の高度な専門性に加え、生成AIや大規模言語モデル(LLM)ベースのツール活用経験も応募要件として示している。
米ITメディアの9to5Macによると、Appleは同ポジションの求人を新たに公開した。自社モデム開発を次世代通信へ拡張する動きの一環とみられる。
募集要項では、次世代セルラーモデムの機能や要求仕様の定義に加え、性能と電力効率を高めるアルゴリズム設計を担当するとしている。ハードウェアとソフトウェアの各チームと連携し、技術を製品へ落とし込む役割も担う。
Appleはこの職種について、無線通信の将来を形づくる「またとない機会」だと説明している。基本年俸は17万5000〜30万8500ドルで、株式報酬や福利厚生も提示している。
応募条件も厳しい。電気工学やコンピュータ工学など関連分野の学位に加え、セルラー技術分野で10年以上の業界経験を求めている。セルラー通信規格への深い理解のほか、MATLAB、C、C++、Pythonの活用能力も必須条件に挙げた。
特徴的なのは、生成AIとLLMベースのツール活用経験を最低要件に含めた点だ。Appleはその目的について、エンジニアリングワークフローの加速だとしている。無線通信に関する研究論文や特許の実績は優遇条件とした。
今回の募集は、6Gがなお初期の研究開発段階にある中で打ち出された点でも注目される。現在、企業や業界団体は6Gの技術的な方向性の整理や標準化作業を進めている。
国際電気通信連合(ITU)は、6Gの理論上の最大速度を200Gbpsとしている。5Gの理論値である20Gbpsを大きく上回る水準だ。遅延についても、0.1ミリ秒級を目標とする研究が進んでいるという。
6Gでは、人工知能(AI)の役割拡大も見込まれている。ネットワークが環境変化に応じて自律的に調整し、信号品質やトラフィックの最適化、消費電力の削減にAIを活用する方向だ。Appleが採用段階から生成AI活用能力を求めたのも、こうした流れを意識したものとみられる。
6Gの商用化はまだ先とされる。最初の正式な6G技術仕様は2028年末ごろに固まる見通しで、商用ネットワークや対応機器の登場は2030年前後になるとの見方が出ている。今回の募集は、足元の製品投入というより、長期的な通信チップのロードマップをにらんだ先行的な人材確保の意味合いが強い。
Appleはこれまでも、無線通信の中核部品で自社開発の比重を高めてきた。今回の採用は、6G時代に求められるモデム性能や電力効率、ソフトウェア連携のノウハウを社内に蓄積する布石となる可能性がある。