IT市場調査会社Gartnerは、企業が注視すべき2027年の戦略的技術トレンド10項目を公表した。具体的には、大規模定量モデル(LQM)、音声推論モデル、ワールドモデル、AIコンテキストプラットフォーム、AIコーディングエージェントハーネス、AIエージェントID、自律型エクスポージャー改善(AER)、ソブリンテック(SovTech)、ワンタイムアプリケーション、サービスとしてのウェットウェアを挙げた。

大規模定量モデル(Large Quantitative Models、LQM)は、定量データの処理と分析に特化して設計された、モジュール型のハイブリッドニューラルネットワークアーキテクチャを指す。事後対応型の問題解決ではなく、シミュレーションを踏まえ、先回りの意思決定を支援するという。

GartnerのシニアVPアナリスト、ジーン・アルバレズ氏は「こうした高度なアプローチは、これまでにないビジネスの俊敏性をもたらす。金融やヘルスケアのような規制の厳しい業界でも、自律的な予測機能を安全に導入できる」と説明した。

トレンドの1つとして、音声を直接分析し、会話全体の文脈や意図を把握した上で次の行動を判断する音声AIシステムも挙げた。

アルバレズ氏は「音声は依然として、企業におけるやり取りの中心的なチャネルだ。しかし過去10年、顧客支援の自動化が進んだにもかかわらず、正確性、速度、解決率はいずれも企業が求める水準に達していない」と指摘した。その上で、「音声推論モデルはこのギャップを大規模に埋め、複雑で高度な判断を伴う対話まで自動化できるようにする」と述べた。

ワールドモデルについては、物理法則を重視した新たなアプローチによって、機械が空間、時間、因果関係を理解できるようになるとしている。

AIコンテキストプラットフォームは、AIエージェントが入力を解釈し、意思決定を行い、ビジネス目標に沿った行動を取るために必要な文脈情報を提供する基盤だ。Gartnerは、2027年までにAI活用に適したデータでセマンティクスを重視する企業は、エージェンティックAIの精度を最大80%高め、コストを最大60%削減できると見込んでいる。

AIコーディングエージェントハーネスは、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通じて自律的に動く開発エージェントの挙動を管理する、クローズドループ型の制御システムを指す。こうした専用ハーネスがなければ、開発者はAIが生成した成果物を都度直接検証する必要がある。

Gartnerはその結果、ガバナンスがかえって重荷となり、コスト負担が膨らみ、AI導入による生産性向上の効果を相殺しかねないと説明した。

AIエージェントは、複数の人の代わりに独立して業務を実行する。このため、Just-in-Time型のアクセス権限を付与できない既存システムでは、深刻なセキュリティ上の脆弱性が生じる可能性がある。

Gartnerは、2028年までに企業のセキュリティ侵害の25%が、管理されていないマシン権限と従来型の認証情報運用に起因するAIエージェントの誤用によって発生すると予測した。アルバレズ氏は「動的ID制御を適用すれば、リスクの高い静的な認証情報を、ポリシーで制御された動的アクセス権限に置き換えられる」とした。

さらに同氏は「AIエージェントIDは、モデルやプロンプト、認証情報をエージェントの行動と結び付けることで、信頼性と説明責任を確保できる」と述べた。

自律型エクスポージャー改善(Autonomous Exposure Remediation、AER)は、AI技術と自動化を組み合わせ、企業全体のデジタル環境における脆弱性を検出し、優先順位付けした上で解消する統合機能だ。パッチや仮想パッチを自動でテストし、本番環境に配備する。

ソブリンテック(SovTech)は、主要ベンダーからの移行を可能にする現実的な出口戦略を前提に、技術面と法制度面の両方から設計されたハードウェア、ソフトウェア、データベース、AIモデルを指す。Gartnerは2030年までに、米国外の企業の75%超がデジタル主権戦略を導入し、地政学リスクとベンダーロックインの低減に向けて基幹ワークロードを移行すると予測している。

ワンタイムアプリケーションは、特定の業務目的のために開発され、目的を達成するか有効性を失った時点で、意図的に利用を終了するよう設計されたソフトウェアアプリケーションを指す。

アルバレズ氏は「ワンタイムアプリケーションへの移行によって、ソフトウェアの調達、設計、予算編成のあり方は大きく変わる」と説明した。さらに「アプリケーションポートフォリオも、長期的なレガシー投資の対象から、ダイナミックなシステムへと転換する」との見方を示した。

従来のシリコンベースのコンピューティングハードウェアは、環境負荷や電力需要の面で限界があり、企業向けAIを無制限に拡張するのは難しい。サービスとしてのウェットウェア(Wetware as a Service)は、コンピューティングのために、生体または合成生物学システムへのクラウドベースのリモートアクセスを提供する新たな運用モデルだ。

Gartnerによると、こうしたホスティング型有機プロセッサは、生化学ネットワークが持つ本来の可塑性を活用し、極めて高いエネルギー効率で複雑なアルゴリズムを実行できるという。

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