炭素排出の削減を他国任せにしながら化石燃料の利用を続ける、いわゆる「気候ただ乗り」戦略が、一部の国ではかえって経済的損失を広げかねない――。そんな見方を、エネルギー戦略家のマイケル・バーナード氏が示した。特に石油・ガスの輸入国では、エネルギー転換が遅れるほど、燃料輸入コストや価格変動リスクに長くさらされる可能性があるという。
20日付でCleanTechnicaに寄稿し、バーナード氏は、太陽光発電、風力発電、蓄電池の価格下落によって「各国の気候対応の採算構造が変わった」と指摘した。これまでは、高コストだった低炭素技術よりも、既存の石炭・石油・ガス設備を維持する方が短期的には有利に見えた。しかし足元では、EVやヒートポンプなど電化の選択肢が大きく広がっているとする。
化石燃料の輸入国は、燃料を調達するたびに国際市況や為替、海外サプライチェーンの影響を受ける。一方で、クリーン電力や電化への投資は、発電設備や送電網、各種機器といった国内の設備投資に資金を回しやすい。長期的には、燃料輸入費の圧縮と大気汚染の抑制を同時に進められる余地があるという。
もっとも、太陽光モジュールが安くなっても、最終的な電気料金がすぐに下がるとは限らない。送配電網の拡充、蓄電設備、需要調整、資金調達コストまで含めて見る必要がある。家庭でも、初期費用を賄う資金がなければ、EVやヒートポンプによる長期的なコスト削減効果を得にくい。
国によって得失が分かれる点も重要だ。化石燃料の輸出国では、石油・ガス輸出収入が財政や雇用を支えており、国内でクリーンエネルギーを拡大するだけでは、その減収を埋めるのは難しい。金利が高い国では、設備価格が下がっても資金調達コストが電力単価を押し上げる可能性がある。さらに、転換に伴う負担が先に生じ、効果は後れて表れやすいことも、政策推進の障害になり得る。
既存のエネルギー業界に加え、再生可能エネルギーの開発事業者や送電事業者も、それぞれに有利な投資・補助金の枠組みを求める可能性がある。バーナード氏は、新たな送電線の建設についても、蓄電設備の導入や既存設備の活用改善と比較しながら判断すべきだと提言した。そのうえで、公的支援は成果指標と終了時点を明確に設計する必要があるとした。
重要なのは、技術が持つ環境配慮のイメージではなく、実際のコストと便益を見極め、最終的に誰が負担するのかを検証することだと、同氏は指摘している。