The Boring Companyは20日、Tesla Model 3のバッテリーパックと駆動系を活用した遠隔操作車両「Liner Truck」で、トンネル内で20フィート海上コンテナを搬送する映像を公開した。狭いトンネル内で重量物を電動で運ぶ構想を示した格好だが、壁面とのクリアランスが極めて小さく、安定した遠隔操作の確保が課題として浮上している。
電気自動車専門メディアのInsideEVsによると、同社が公開したLiner Truckは、トンネル掘削現場で重量物を運ぶ用途を想定した車両だ。ベースにはTesla Model 3のバッテリーパックと駆動系を採用した。
The Boring Companyは8月にも遠隔操作式のLiner Truckを披露している。もともとは、掘削現場でプレキャストコンクリート製のトンネルセグメントを搬送する用途を主眼に設計されたもので、今回は標準的な海上コンテナも扱えることを示した。
公開映像では、Liner Truckがコンテナを載せてトンネル内を進む様子が確認できる。ただ、コンテナとトンネル壁面の余裕は左右それぞれ約1インチにとどまる。場面によってはコンテナ上部の角が壁面に接触しかねないようにも見え、わずかな路面の凹凸や操作誤差でも接触につながる可能性がある。狭所での高精度な車両制御が欠かせない。
運用面でもハードルはある。The Boring Companyは「Zero People in Tunnel」を掲げ、トンネル内に作業員を入れない方針を打ち出している。Liner Truckも遠隔操作での運用を前提としており、作業員の直接介入を減らせる半面、視界と空間が限られた環境で重量物を繰り返し安全に運ぶには、遠隔操作の安定性が前提条件となる。
搬送能力は大きい。同社によると、Liner Truckは最大2万2000ポンド(約10トン)の運搬が可能で、プレキャストコンクリート製トンネルセグメント1回分の搬送重量に相当するという。Model 3由来の電動駆動系を土木資材の搬送へ転用した形だ。
一方、速度と航続距離は限定的だ。最大積載時の走行速度は時速12マイル(約19km)、1回の充電で走行できる距離は約28マイル(約45km)としている。一般道での長距離輸送ではなく、トンネル内で重量物を低速搬送する用途に特化した仕様といえる。
Liner Truckの投入は、同社のトンネル事業拡大とも連動している。The Boring Companyは9月、30億ドル(約4500億円)を調達し、企業価値は230億ドル(約3兆4500億円)と評価された。資金の大半はアラブ首長国連邦からのもので、現地では総延長150kmのトンネル掘削を計画しているという。米テネシー州ナッシュビルでも、10マイル(約16km)規模の追加掘削に着手した。
トンネル工事が拡大すれば、坑内物流の重要性も高まる。掘削現場では、コンクリートライナーをはじめとする資材を継続的に供給する必要があるためだ。Liner Truckは、資材搬送の電動化に加え、遠隔操作によって現場の自動化を進める手段として活用される可能性がある。
同社が掲げてきた交通問題解決の構想と比べると、今回の公開は公共交通そのものではなく、トンネルの建設・維持を支える物流に重点を置いた内容といえる。現在の代表的な実運用区間はラスベガスの数マイル規模のトンネルで、Liner Truckも当面は公共輸送向けというより、掘削現場向け作業機器として用途拡大を図る公算が大きい。
今後の焦点は、超狭小トンネル内で遠隔操作車両が重量物をどこまで安定して繰り返し搬送できるかだ。大規模プロジェクトで搬送効率と安全性を実証できれば、Liner Truckが同社の掘削現場を支える中核的な物流機器として定着する可能性もある。
同社はXへの投稿で、「TBCのトンネルを使って貨物を輸送する。最新のPrufrock Liner Truck(Tesla Model 3のバッテリーとドライブユニットを使用)は、標準的な20フィート海上コンテナを運べるよう改造した」と説明した。