米銀最大手のJP Morgan Chaseが、AI導入の効果を高めるため業務プロセス全体の再設計を進めている。個別作業の処理速度を上げるだけでは十分な成果につながらないとして、生産性の検証や統制体制の整備にも重点を置く。
20日付けのAmerican Bankerによると、JP Morgan Chaseのコンシューマー・アンド・コミュニティ・バンキング部門でCIO(最高情報責任者)を務めるギル・ハウス氏は最近のインタビューで、AI活用に伴う生産性測定、業務再設計、ガバナンスの重要性を強調した。
代表例として挙げたのがソフトウェア開発だ。AIによってコード作成が高速化しても、テストやドキュメント整備、セキュリティレビュー、デプロイが同じペースで進まなければ、ボトルネックが別工程に移るだけだという。
このため同行は、AIの活用範囲をコーディング支援にとどめず、配布用ドキュメントの作成、匿名化した運用ログの分析、システム障害への対応支援にも広げている。
ハウス氏は「当社がエンジニアを採用するのは、単にコードを書かせるためではなく、何を書くべきかを判断してもらうためだ」と述べた。
既存の自動化手法についても見直しを進める。分断されたシステム間の定型作業を担ってきたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)をAIエージェントにそのまま置き換えるのではなく、レガシーシステムの刷新によって不要な作業自体をなくす方針だ。
AIが実際の経営成果に結び付いているかをどう検証するかも課題となっている。処理時間やエラー率、投入リソースを導入前後で比較し、コスト削減やサービス改善につながったかを評価すべきだとしている。
AIにどこまで権限を与えるかも主要テーマの一つだ。JP Morgan Chaseは、MetaのMuseを含む外部AIエージェントによる顧客口座への無断アクセスを遮断しているという。
JP Morgan Chaseのジェイミー・ダイモンCEO(最高経営責任者)は13日の決算発表で、「統制されていないAIエージェントは、顧客と銀行の双方にリスクをもたらしかねない」と警告した。
ハウス氏は「従来のRPAと異なり、AIエージェントの挙動は完全には予測しにくい」と説明。その上で、「信頼できるデータ基盤とアクセス権管理、継続的なモニタリングに加え、人間の監督者が介入できる手順を整える必要がある」と強調した。
JP Morgan Chaseは、単純な自動化の拡大ではなく、人とAIの役割を再定義しながら、成果の検証と統制の両立を図る姿勢を鮮明にしている。