ステーブルコイン規制を巡り、利用者保護と自己保管の扱いが新たな論点となっている。写真=Shutterstock

米国で進むステーブルコイン規制を巡り、業界側が利用者保護と自己保管の明確化を求めている。米国家暗号資産協会(NCA)は20日、米財務省に対し、GENIUS法案第3条の施行規則に関する意見書を提出した。発行体に対する100%準備金要件は受け入れる一方、規制移行時の資金凍結回避や、非カストディ型サービスを規制対象とするかどうかの線引きの明確化を求めた。

U.Todayによると、意見書にはNCA会長で、Rippleの最高法務責任者(CLO)を務めるスチュアート・アルデロティ氏が署名した。

NCAは、ステーブルコイン発行体に対する準備金規制など制度の骨格自体には異論を示していない。ただ、実際の施行段階では、一般利用者が不利益を被らないよう、財務省が運用面のルールを具体的に設計すべきだと訴えた。

最初の論点として挙げたのは、発行体の法的地位が変わった場合でも、利用者の資金へのアクセスを一律に遮断しない仕組みだ。NCAは、発行体が法施行上の期限とされる2028年7月18日を過ぎた場合や、ライセンスを失った場合でも、利用者資金が自動的に凍結される事態は避けるべきだと主張した。

その対応策として、一定期間に限って利用者が保有するステーブルコインを償還したり、売却や他資産への転換を行ったりできるセーフハーバー制度を提案した。規制移行に伴う資産整理の時間を確保するとともに、取引所などの関連事業者が違法取引の支援と見なされる過度な法的リスクを負わずに、必要な技術支援を提供できるようにすべきだとしている。

盗難や誤送付が発生した場合の返還手続きも、主要な論点の一つに位置付けた。NCAは、裁判所命令がある場合には、決済用ステーブルコインの再発行を適法に実施できるよう、規則上の明確な根拠を設けるべきだと求めた。適法な命令に基づく必要な措置の例外規定に、再発行手続きを含めるべきだという立場だ。

資産凍結の手続きについては、米財務省傘下の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の基準との整合性を確保するよう提案した。あわせて、凍結の対象となった利用者に対し、発行体が速やかに通知できる仕組みも必要だとした。マネーロンダリング対策や違法取引への対応は維持しつつ、正当な資産返還まで不必要に妨げない制度設計を求めている。

NCAはまた、個人向けウォレットやソフトウェア開発会社をどこまで規制対象に含めるかを明確にすべきだと主張した。利用者の秘密鍵を保有・管理していない非カストディ型ウォレットや、単にインターフェースを提供する事業者は、仲介業者や販売業者と同列に扱うべきではないとしている。

残高表示や取引画面を提供しているだけで、資産そのものを管理していないサービスまで規制対象に含めれば、技術提供者の責任が過度に広がりかねないとの懸念も示した。このため、個人間の直接送金や、個人が保有する口座間の取引、個人ウォレット内部で完結する取引は、当局の制限対象から明確に除外すべきだと訴えた。

焦点となっているのは、利用者がステーブルコインを自ら保管・送金する自己保管(self-custody)の権利をどう位置付けるかだ。規制対象事業者を介した取引や保管に監督を及ぼすことと、個人が自身のウォレットと資産を直接管理する選択肢を確保することは、分けて考えるべきだというのがNCAの主張である。

今回の意見書は、暗号資産業界がステーブルコイン規制そのものに反対しているのではなく、施行段階で生じ得る利用者被害や法的不確実性の抑制を重視していることを示している。NCAは100%準備金要件を受け入れたうえで、発行体の規制上の地位変更に伴う利用者保護、盗難資産の返還、非カストディ型サービスの規制範囲という3つの論点を提示した。

今後は、施行規則を策定する米財務省の判断が焦点となる。セーフハーバーの適用範囲、資産再発行の手続き、非カストディ型ウォレットやソフトウェア提供事業者に対する規制基準がどう定まるかによって、ステーブルコイン発行体や取引所、ウォレットサービスの運用も変わる可能性がある。とりわけ、利用者の自己保管と不正資金対策のバランスをどう取るかが、今後の制度設計の大きな焦点となりそうだ。

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