Dell TechnologiesのJohn Roese氏(グローバル最高技術責任者〈CTO〉兼最高AI責任者〈CAIO〉)は20日、企業がAIで競争力を高めるうえで重要なのは、最新モデルの確保よりも業務運営の見直しと社内に蓄積された固有知識の活用だとの認識を示した。AIエージェントを導入しても、組織の運営方法を変えなければ効果は限られるという。
SiliconANGLEによると、Roese氏はニューヨークで開かれたDell Technologiesのシンポジウムでこう述べた。
Dellはこの約2年間、自律型AIエージェントを社内業務に活用してきた。その経験を踏まえ、企業はAIツールを追加導入するだけでなく、組織構造や業務プロセス、人員配置まで含めて再設計する必要があると強調した。
Roese氏は「運営方法を変えないままAIだけを導入しても、既存業務に新技術を上乗せするだけに終わりかねない」と指摘。AIエージェント導入の本質は、人が担ってきた仕事を機械とどう分担し直すかにあると説明した。
Dellがもう一つ重視しているのが、社内に蓄積された専門知識だ。同社は、社員の業務経験や判断基準をAIが参照できる「スキルファイル」として整理している。
スキルファイルはMarkdown形式の簡易な文書だが、外部には公開されない企業固有の業務ルールや意思決定基準が盛り込まれている。
AIエージェントはこれを活用し、一般的な回答を返すのではなく、Dellの基準に沿ってコードを記述したり、取引価格を算定したり、顧客対応を担ったりする。
また、エージェントが業務を処理する過程で、新たな知識や業務間の関係性が蓄積される点も特徴だ。Dellはそれらを知識グラフとして結び付け、業務能力の高度化に生かしている。
Roese氏は、こうした知識こそが競合他社のAIとの差別化につながる中核資産であり、外部企業に無分別に渡すべきではないと強調した。一方で、最先端モデルやオープンモデルを活用すること自体に問題はないとも述べた。真の競争力はAIモデルそのものではなく、競合とは異なる形で蓄積し、運用してきた固有知識にあるという。
企業向けAIの競争の焦点は、モデル性能そのものの優劣から、組織運営の改革と独自知識の管理・活用へと移りつつある。