BlackRockは、ビットコイン下落時の損失を一定程度抑える設計の上場投資信託(ETF)を米証券取引委員会(SEC)に登録申請した。上昇局面の値動きを一部取り込みつつ下落リスクの抑制を図る商品で、現物連動型やインカム型に続くビットコインETF戦略の拡充と位置付けられる。
申請したのは「iShares Bitcoin Managed Protection ETF」で、ティッカーは「PBIT」。10月20日付の報道によると、同商品はビットコインETFの中でも、下落時の損失を一定程度吸収する「バッファ型」に当たる。
BloombergのETFアナリスト、ジェームズ・セイファート氏は、PBITについて、下落局面での損失を一部和らげる一方、上昇局面の収益には一定の上限がかかる商品だと説明した。投資家はビットコイン上昇の恩恵を一部享受できる半面、リスク低減の対価として値上がり益の一部を手放すことになる。
目論見書によると、PBITはBlackRockの現物ビットコインETF「iShares Bitcoin Trust(IBIT)」の値動きを参照して運用する。ただし、ビットコインそのものやビットコイン関連の上場投資商品を直接保有するわけではなく、特定指数への単純連動を目指す商品でもない。
運用の中核となるのは、オプションと短期国債を組み合わせた戦略だ。ファンドは複数のオプションを買い付ける一方、別のオプションを売却し、その売却によるプレミアムで取得コストの一部を賄う。
こうした売りオプションはコスト負担の軽減につながる一方、ビットコイン価格が大きく上昇した場合の収益を抑える要因にもなる。残りの資産は短期国債などの債券で運用し、得られた利息収入をオプション戦略のコスト補填や下値保護の原資に充てる。
もっとも、損失緩和の水準が常に一定というわけではない。目論見書では、各設定期間における当初の最大緩衝水準をおおむね10%としているが、実際の水準は運用判断によって変動し得ると明記した。ファンド全体に一律で適用される固定的な保護水準や、あらかじめ保証された収益上限がある仕組みではない。
BlackRockは、戦略が想定通り機能しなかった場合、投資家が元本の一部または全部を失う可能性があると警告している。PBITは元本保証型の商品ではなく、オプションを用いて損益特性を調整する投資商品だとしている。
PBITは、BlackRockのビットコインETF群を広げる新商品となる。BlackRockは2024年1月に現物ビットコインETFのIBITを上場し、2026年6月にはオプション・プレミアム収益の分配を狙う「iShares Bitcoin Premium Income ETF(BITA)」を投入した。
IBITがビットコイン価格への直接的なエクスポージャーを提供するのに対し、BITAはオプション・プレミアムを通じた収益確保に軸足を置く。PBITはこれに下落リスクの抑制という要素を加えた商品といえる。
ビットコイン関連ETFを巡っては、オプション市場を活用した商品基盤も整いつつある。SECは2024年9月、IBITのオプション取引を承認した。セイファート氏によると、下方リスクを抑える構造のビットコインETFは、KalamosやFirst Trustでもすでに運用されている。
今回の申請は、ビットコインETF市場が単純な価格連動型から、投資目的やリスク許容度に応じて商品を細分化する流れを映すものでもある。上昇余地を重視する投資家と、価格変動の大きさを抑えたい投資家とで、選好が分かれつつあるためだ。
なお、PBITは現時点でSECの承認を得ていない。手続きは登録申請段階にあり、提出書類には効力発生まで75日を要すると記載されている。具体的な上場時期は明らかになっていない。
投資家にとっての確認ポイントは、実際にどの程度の損失緩和が見込めるのか、上昇局面の収益がどの水準で抑えられるのか、さらにオプション運用の結果が市場環境によってどう変わるのかにある。損失緩和の水準は固定ではなく、元本保護型商品でもないため、商品構造とリスク要因を十分に見極める必要がある。