米血液検査スタートアップTheranosの不正を暴いた調査報道記者ジョン・キャリルーは19日(現地時間)、エリザベス・ホームズ元最高経営責任者(CEO)を題材にしたドキュメンタリー「You Can See Everything」について、作品として高く評価する一方、実際の詐欺事件における被害と責任とは切り分けて受け止めるべきだと訴えた。
Business Insiderが19日(現地時間)に伝えたところによると、キャリルーは同作について「素晴らしい芸術作品だ」と評価したうえで、「作品の評価と、そのもとになった事件の事実関係を混同してはならない」と述べた。
同作はネイサン・フィールダーとランス・オッペンハイムが共同監督を務め、ホームズが2023年に連邦刑務所へ収監されるまでの34日間を追った作品だ。報道によると、ホームズは劇中でも、自らへの有罪判決は不当だとの立場を崩していない。
映画はTheranos詐欺の全容そのものより、ホームズの私生活や言動に焦点を当てている。このため観客の受け止め方は分かれ、ホームズの本意をつかみかねるという反応のほか、衝撃や同情を示す声も出ている。
これに対しキャリルーは、作品への評価がホームズ本人の責任をあいまいにしてはならないと強調した。X(旧Twitter)では、ホームズが内部告発者のタイラー・シュルツとエリカ・チョンに執拗な圧力をかけたほか、自身に対しても数カ月にわたり連日のように訴訟をちらつかせる脅しがあったと明らかにした。
そのうえで、こうした動きは大規模な詐欺を隠そうとする冷酷な隠蔽工作であり、その中心にホームズがいたと主張した。
キャリルーは2015年、The Wall Street Journalでの報道を通じて、Theranosの血液検査技術や事業運営を巡る疑惑を追及した。ホームズは投資家を欺いた罪などで2022年に有罪判決を受け、翌2023年に収監された。
一方で、キャリルーは作品自体を批判しているわけではない。同作を2回鑑賞したとしたうえで、事件の詳細な経緯を知りたい人には自著「Bad Blood」を勧めた。
また、映画を「非常に気に入っている」とも述べ、アカデミー賞作品賞候補にふさわしいとの趣旨の見解も示した。芸術的な達成を認めつつも、現実の事件における被害と責任は別問題として判断すべきだというのが、キャリルーの一貫したメッセージだ。