SpaceXが米移動通信市場への参入に向けた動きを強めている。800MHz帯の低帯域周波数の確保に加え、次世代Starlink衛星1万5000基の配備承認も得ており、AT&T、Verizon、T-Mobileの大手3社が支配する市場に挑む構えだ。
The Vergeが17日(現地時間)に報じたところによると、SpaceXはプライベートエクイティのGrain Managementから、800MHz帯の利用権を約80億ドル(約1兆2000億円)で取得することで合意した。さらに、2025年にEchoStarと結んだ周波数取引も、その後約200億ドル(約3兆円)規模に膨らんだという。
米連邦通信委員会(FCC)はこのほど、次世代のStarlinkモバイル衛星1万5000基の配備を承認した。SpaceXは衛星と地上基地局を組み合わせた通信網を整備し、全米でのサービス展開を目指す。
800MHz帯のような低帯域周波数は、電波の到達距離が長く、建物内にも届きやすい。このため、携帯通信網の整備に適した周波数帯とされる。
LightShed Partnersの通信業界アナリスト、ウォルター・ピエシク氏は「スマートフォンの限られた送信出力や屋内での通信環境を踏まえると、衛星だけでは十分ではない」と指摘し、地上網の構築が不可欠との見方を示した。
一方で、巨額の投資負担は大きな障壁となる。ピエシク氏は、初期の地上網整備に100億〜150億ドル(約1兆5000億〜約2兆2500億円)が必要になると試算。加えて、既存通信事業者のネットワークを利用するローミング契約の有無が、参入初期の成否を左右する主要要因になるとみている。
既存事業者の中では、Verizonが最も影響を受ける可能性があるとの見方もある。ピエシク氏は、Verizonがミリ波中心の周波数戦略に注力してきた一方で、競合との差別化に苦戦していると分析した。
もっとも、SpaceXが短期間で大手3社と対等に渡り合うのは容易ではない。全国規模の通信網を構築するには、相応の時間と追加投資が必要になるためだ。
衛星インターネットで築いた優位性を地上の移動通信へ広げ、米通信市場に新たな競争をもたらせるかが注目される。