ウクライナが、SpaceXの軍用衛星サービス「Starshield」の利用制限によって軍事作戦に支障が出たと主張し、同サービスを誰が統制し、どのような枠組みで運用しているのかに改めて関心が集まっている。
CNBCが15日(現地時間)に報じた。ロシアがキーウへの攻勢を強めるなか、ウクライナ側はSpaceXが事前通知なしにStarshieldの利用を制限し、軍事作戦に支障を及ぼしたほか、民間人保護の取り組みにも影響が出たと訴えている。
焦点となっているのは、Starshieldの運用判断を誰が担っているのかという点だ。イーロン・マスク氏は15日(現地時間)、利用制限の判断はSpaceXではなく、米政府側の権限に属するとの認識を示した。
マスク氏は、Starshieldのシステムは米政府が保有・管理しており、米軍、最終的にはドナルド・トランプ大統領が利用範囲を決めると説明した。ホワイトハウスと米国防総省は、関連する問い合わせに対し直ちには回答していない。
Starshieldは、SpaceXの一般向け衛星インターネットサービス「Starlink」を基盤に構築した、政府機関・国家安全保障分野向けの衛星ネットワークだ。SpaceXは中核領域として、地球観測、政府利用者向けのセキュアなグローバル通信、顧客機器を衛星に搭載するホステッド・ペイロードを挙げている。
Starlinkとの大きな違いは、セキュリティ水準と用途にある。Starlinkが個人や企業向けを中心としつつ、一部の防衛用途にも使われる汎用サービスであるのに対し、Starshieldは機密性の高い運用を前提に暗号化を強化しているのが特徴だ。
SpaceXによると、Starshieldの衛星は多様な機器の搭載に対応し、レーザー通信技術によって他の衛星との接続も可能だという。
マスク氏は、StarshieldとStarlinkの役割分担についても言及した。商用サービスであるStarlinkは民間用途や防衛関連用途での利用を想定している一方、攻撃的な軍事作戦には使用できないと述べた。
一方で、両サービスが完全に切り離されているわけではないこともうかがえる。Starshieldは、より強固な暗号化や専用端末を採用する一方、実運用ではStarlinkの広範な衛星網を基盤としているためだ。
そのため今回の問題は、単なる利用制限の是非にとどまらず、商用技術と軍事インフラがどのように結び付いているのかを示す事例としても注目される。SpaceXは最新の業績報告で、Starshieldに関する米政府の複数年契約の総額が60億ドル(約9000億円)を超えると明らかにした。
この契約の大半は、低軌道の通信・監視衛星コンステレーションに関する2件の宇宙軍契約によるものだとしている。
Starlinkの事業規模も大きい。SpaceXによると、Starlinkは160を超える国・地域で展開しており、住宅向け料金プランは月額55ドル(約8250円)から。大半の地域でダウンロード速度は400Mbps超としている。
こうした構図からは、Starshieldが独立した軍向けブランドでありながら、ネットワーク基盤ではStarlinkと密接に結び付いている実態が浮かぶ。ウクライナで浮上した利用制限を巡る論争は、特定端末やサービス設定の問題を超え、戦時下において民間企業の技術と米政府の統制がどこで交わるのかという論点にもつながっている。