米フロリダ州で、EV(電気自動車)と電動トラック向けの充電網整備に配分された連邦補助金1億9700万ドル(約296億円)が執行されていない一方、フライングカー向けの「空中高速道路ネットワーク(Aerial Highway Network)」構想が検討されていることが波紋を広げている。実用段階にある充電インフラより、将来構想が優先されているのではないかとの批判が出ている。
電気自動車メディアのCleanTechnicaが18日(現地時間)に報じた。これによると、フロリダ州交通局は、フライングカーの離着陸や充電に対応する拠点を含む空中高速道路ネットワーク構想を検討している。一方で、EV向け高速充電網の整備に充てられた連邦予算は、実際の事業に投じられていないという。
争点は、足元で需要があるEV充電インフラと、商用化が限定的な次世代移動手段のどちらを優先するのかという点だ。フロリダ州交通局は関連報告書で、納税者負担を日常利用の乗用車向けに充てるべきではないとの考えを示したとされる。もっとも、フライングカー関連構想に実際の予算措置が講じられたかどうかは確認されていない。
背景には、2021年に成立した米国の超党派インフラ法がある。同法は、全米の高速道路周辺でEV・電動トラック向けの急速充電網を拡充するための財源を確保し、高速道路から1マイル以内への充電設備整備を主な目標に掲げている。
充電設備事業者は、設置費用の約80%を連邦補助金で賄い、残る20%を自己負担する形で事業を進められる。Buc-ee'sやWawaといったガソリンスタンド併設型コンビニ事業者も恩恵を受ける対象として想定されるが、フロリダ州では予算が設備拡充に結び付いていない点が批判の対象となっている。
CleanTechnicaはあわせて、Teslaの次世代ロードスター発表にも触れ、現実的な技術課題より未来的な演出が前面に出ていると指摘した。イーロン・マスクCEOは次世代ロードスターを「意図を込めたプロトタイプ」と紹介。発表イベントでは、車両が空中に浮いた後に姿勢を変え、空気噴射装置を使って着地し再加速するようなデモが行われたという。
注目を集めたのは、一般的な電動スポーツカーとしての性能や量産計画よりも、浮遊を想起させる演出だった。デモは技術的な可能性を印象付ける狙いとみられるが、量産車に実装される機能や性能、発売時期についてはなお見極めが必要だ。
Teslaはこれまで、EV普及と充電インフラ拡大をけん引してきた代表的な企業だ。自社充電ネットワークを構築し、市場で存在感を高めてきた経緯があるだけに、今回のロードスター発表については、実質的な製品開発より話題性を重視したのではないかとの見方も出ている。CleanTechnicaは、この発表がTesla株に与える影響についても疑問を投げかけた。
フロリダ州の政策とTeslaの発表は領域こそ異なるものの、将来技術への期待と足元の実用課題のギャップを浮き彫りにした点では共通している。フロリダ州は、すでに配分された充電インフラ向け予算を使わないまま空中移動構想を検討しており、Teslaは次世代車を打ち出しながらも、今回の発表では道路を走る製品としての現実味より「空を飛ぶ」印象が際立った。
今後の焦点は、構想や演出が実際の成果に結び付くかどうかだ。フロリダ州が連邦補助金を充電網拡充に充てるのか、それとも空中高速道路ネットワーク構想の具体化を進めるのかで、政策の優先順位はより明確になる。Teslaにも、デモにとどまらず、製品性能と量産計画を具体的に示すことが求められそうだ。
将来の移動手段への投資は技術革新を促す可能性がある一方、商用化の見通しや社会的な必要性、既存インフラの不足といった現実的な課題も併せて見極める必要がある。今回の論争は、華やかな未来像が現在の電動化課題に優先されるべきなのかを問いかけている。