写真=マイケル・ギルモア氏のLinkedInより

フィンテック業界に巨額の資金が流れ込む一方で、消費者の金融リテラシーはむしろ低下している――。MAIA(Money Awareness and Inclusion Awards)創設者で、Albizia Capitalのリサーチディレクターを務めるマイケル・ギルモア氏が英Financial Timesへの寄稿で、こうした現状に警鐘を鳴らした。

ギルモア氏は、フィンテック企業が過去10年で1兆ドル超の投資を呼び込んだと指摘した。投資拡大の勢いは足元でも続いているという。

KPMGの集計によると、今年上期にフィンテック企業へ投じられた資金は1000億ドル超(約15兆円)に達し、前年同期の2倍超となった。ギルモア氏は、こうした資金が主に決済システムや複雑なトレーディングプラットフォーム、後払い決済(BNPL)に向かう一方、金融教育や金融能力の底上げにはほとんど振り向けられていないと問題視する。「BNPLのようなサービスが、数千億ドル規模の投資を正当化するほど画期的なイノベーションには見えない」とも述べた。

一方で、金融リテラシーの水準は後退している。米Teachers Insurance and Annuity Association of America(TIAA)とスタンフォード大学のGlobal Financial Literacy Excellence Center(GFLEC)による調査では、米国の成人の金融知識に関する設問の平均正答率は47%だった。2020年の52%から低下し、調査開始以来10年間で最低水準となった。

英国でも状況は厳しい。昨年末に実施された若年層調査では、金融に関する5問すべてに正答した割合は3%にとどまった。銀行で資金管理を学んだと答えた割合も2%だった。

ギルモア氏は、決済や支出管理、投機向けのアプリがあふれる一方で、一般消費者が自分の資産やお金の管理について十分に理解していない現状を「逆説」だと位置付ける。

その上で同氏は、今年のMAIA受賞者に別の方向性を見ている。最優秀フィンテック賞は、AIを活用して個人の金融課題の解決を目指す英国スタートアップMunnyが受賞した。

詐欺対応キャンペーン部門では、詐欺被害者が運営するオーストラリアの非営利団体Scam Victim Allianceが選ばれた。Global Anti-Scam Alliance(GASA)によると、詐欺被害額は年間4420億ドル(約66兆3000億円)に上る。英国国家統計局(ONS)のデータでは、直近2年間で銀行・信用口座詐欺は約40%増加した。

ギルモア氏は、フィンテック企業が集めた資金は、深夜でも被害者対応に当たる人々や、詐欺対策を支援するAI、個別最適化した金融教育にこそ向けられるべきだと主張する。その上で、金融能力の強化は慈善ではなく、長期的な投資として捉えるべきだと強調した。

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