ラリー・フィンク氏 写真=BlackRock

BlackRockのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は15日、米国でAIデータセンターの建設が滞れば、景気後退を招く可能性があると警告した。全米でデータセンターを巡る規制が強まるなか、AIインフラ向けの巨額投資が雇用や成長、市場に及ぼす影響に関心が集まっている。

ブロックチェーン系メディアのDecryptが15日(現地時間)に報じたところによると、フィンク氏はCNBCの番組で、AIブームを支えるデータセンター投資が止まれば、米国経済に大きな打撃になり得ると述べた。

フィンク氏は、債務返済の繰り延べが起きれば米国経済は景気後退入りしかねないとしたうえで、米経済はこうした資本支出(設備投資)への依存度が高いと説明した。AIインフラ投資は技術分野にとどまる話ではなく、雇用や設備、エネルギーインフラ需要を幅広く押し上げているとの認識を示した。

背景には、全米でデータセンター建設に対する地域の反発が強まっていることがある。住民や地方政府は、電力需要の急増や水使用量の増加、送電網への負荷を理由に、新規プロジェクトへの制限を強めている。Brookingsによると、7月までに少なくとも100地域が建設停止措置を承認し、ニューヨーク州では一部の許認可手続きを最長1年停止しているという。

これに対し、フィンク氏は「その多くは誤情報だ」と反論した。そのうえで、問題はデータセンターそのものではなく、エネルギーインフラの拡充とそれに伴う経済効果にあるとの見方を示した。

市場では、AIインフラ投資の規模がすでに米国の成長率を左右し得る水準まで膨らんでいる点に注目が集まっている。ウォール街のアナリストは、AI関連の資本支出が2027年に1兆ドル(約150兆円)を超え、2030年までの累計では5兆ドル(約750兆円)を上回る可能性があるとみている。フィンク氏はこれまでも、年率3%前後の国内総生産(GDP)成長を維持するには、さらに民間資本が必要だと主張してきた。Decryptによると、BlackRockはこの件を巡り、AMDやBroadcomなど半導体企業とも協議してきたという。

一方で、世論の逆風は強まっている。Annenberg Public Policy Center(APPC)が今夏に実施した調査では、回答者の61%が居住地域での新たなデータセンター建設に反対すると答えた。春の時点の49%から反対比率は上昇し、民主党支持層、共和党支持層、無党派層のいずれでも反対が多数を占めた。

規制強化の動きも広がっている。ニューヨーク州は超大型データセンターに対するモラトリアムを実施中で、テキサス州は承認手続きを停止した。オースティンやジャージーシティなど複数の都市でも独自の制限が導入されている。Data Center Watchは、2026年1〜3月期だけで約1300億ドル(約19兆5000億円)規模のプロジェクトが阻止または遅延したと集計した。

この問題は選挙戦の争点にも広がっている。オハイオ州の上院選では、民主党のシェロッド・ブラウン氏がデータセンター拡張への反対を掲げた。一方、マーク・アンドリーセン氏やOpenAIのグレッグ・ブロックマン社長らAI業界の富豪が支援するスーパーPACは、激戦州でデータセンターを擁護する広告に数百万ドルを投じた。ドナルド・トランプ米大統領も、データセンターを拒む地域社会は最終的に立ち遅れる可能性があると警告した。

この論争は、暗号資産市場にとっても間接的な変数になり得る。足元のビットコインは、マクロ経済の動向やリスク資産選好に敏感に反応しているためだ。米国のAIインフラ投資が減速し、景気の下振れ懸念が強まれば、市場全体の重荷となる可能性がある。

フィンク氏の発言が注目を集める背景には、暗号資産市場におけるBlackRockの影響力もある。世界最大級の資産運用会社を率いる同氏は、ビットコイン現物ETF市場の主要プレーヤーでもある。フィンク氏はこれまで、ビットコインを「恐怖に包まれた世界のための資産」と表現したことがあり、BlackRockもAIエージェントが暗号資産需要の次の原動力になり得ると言及してきた。データセンター規制の拡大が、AI投資、マクロ経済、デジタル資産市場を同時に揺るがす可能性がある点が、新たな焦点として浮上している。

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