ネット銀行と地方銀行による共同融資が、個人向けローンから法人向け融資へと広がっている。金融当局が関連規制の見直しを進める中、ネット銀行の非対面チャネルと地方銀行の企業審査ノウハウを組み合わせた新たな融資モデルとして定着するかが注目される。
金融業界によると、金融委員会は7日、Toss Bankと光州銀行が申請した法人向け共同融資サービスを革新金融サービスに新たに指定した。7月にKakaoBankと釜山銀行の中小企業・小規模事業者向け共同融資を指定しており、法人融資分野では2件目の協業事例となる。
今回の法人向け共同融資では、利用者がToss Bankの非対面チャネルを通じて融資を申し込み、両行がそれぞれ審査を実施したうえで、融資限度額と金利を共同で決定する。融資資金は両行が50%ずつ負担する仕組みだ。
特徴は、これまで店舗来店や対面相談が中心だった企業の信用・担保融資の多くを、非対面で処理できるようにした点にある。企業審査に必要な書類の大半を自動収集し、両行の信用評価モデルを併用して融資限度額と金利を算定する。
Toss Bankは、企業顧客の書類準備や来店負担を軽減できるほか、単独で取り扱いが難しかった中小企業にも融資機会を広げられるとみている。
先行事例となったKakaoBankと釜山銀行の法人向け共同融資も、地方銀行の企業審査力とネット銀行のデジタル基盤を組み合わせるモデルだ。地域の中小企業と小規模事業者の資金アクセス改善や金利負担の軽減を狙い、2027年中の提供開始を目標に準備を進めている。
個人向け信用ローンから拡大
ネット銀行と地方銀行の共同融資は、2024年にToss Bankと光州銀行が初めて導入した。両行は同年6月に革新金融サービスの指定を受け、8月に個人向け信用ローン商品「ハムケローン」を投入した。
ハムケローンは、利用者がToss Bankアプリで融資を申し込むと、両行が個別に審査し、融資限度額と金利を共同で決める商品だ。融資資金も両行が半分ずつ負担し、ネット銀行の非対面プラットフォームと地方銀行の与信審査力を組み合わせた。
取扱実績も伸びている。Toss Bankによると、ハムケローンの累計供給額は昨年5月23日時点で1兆ウォンを突破した。発売から約9カ月での到達で、累計実行件数は約3万2000件となった。
この共同融資モデルはその後、他のネット銀行にも広がった。KakaoBankと全北銀行は昨年4月に革新金融サービスの指定を受け、同年12月に個人向け信用ローン商品「カチローン」を発売した。給与所得者を対象に最大2億ウォンを融資し、両行がそれぞれ審査したうえで融資資金を半分ずつ負担する方式を採る。
K Bankと釜山銀行も昨年7月に革新金融サービスに指定され、同年11月26日に共同融資サービスを開始した。K Bankアプリで申込から契約、実行、返済まで完結でき、両行が個別に審査した後、融資資金を50%ずつ分担する。
これにより、ネット銀行と地方銀行による個人向け信用ローンの共同融資は、Toss Bank・光州銀行を皮切りに、KakaoBank・全北銀行、K Bank・釜山銀行の3組へ広がった。
個人向け信用ローンで積み上げた協業の実績が法人融資に波及することで、共同融資の運用も新たな段階に入る。企業向けの共同融資自体は従来からあったが、今回はネット銀行の非対面プラットフォームと地方銀行の企業審査力を組み合わせ、申込から審査、資金供給までを連携させる点が特徴となる。
規制緩和が制度面を後押し
法人向け共同融資の拡大は、金融当局が進める地域金融活性化策とも連動している。
金融委員会は7月の地域金融懇談会で、地方銀行とネット銀行による中小企業・個人事業者向け共同融資の運用方針を公表した。地方銀行の企業審査力と、ネット銀行の低い資金調達コスト、非対面インフラを組み合わせることで、地域企業の資金アクセス向上を図る考えだ。
同委員会は当時、ネット銀行の資金調達コストが地方銀行より平均で0.30ポイント程度低い点に注目した。これを活用し、既存の地方銀行の融資商品より少なくとも0.30ポイント低い金利で融資を供給する目標を示している。
ネット銀行は地方銀行との協業を通じて中小企業向け融資の取扱経験や審査能力を蓄積できる。一方、地方銀行はネット銀行のプラットフォームを活用し、非対面での顧客接点を広げられる。こうした相互補完関係も政策推進の背景にある。
金融当局は法人融資拡大を後押しする制度整備も進めている。金融委員会は7月、ネット銀行の対面業務の許容範囲を見直す案を議決し、9月30日にはその内容を盛り込んだ「銀行業監督規定」改正案を予告した。
ネット銀行は原則として非対面で銀行業務を行う必要があるが、法人融資では書類原本の確認や資金使途の点検、担保物件の現況確認など、対面対応が必要となる場合がある。
改正案には、非対面で提出された書類の偽造・改ざんの有無を確認するための原本確認に加え、資金使途の適正性や担保価値の点検、延滞債権の管理、債務調整に関する相談などに必要な対面業務を認める内容が盛り込まれた。
金融委員会は11月9日まで意見募集を行い、関連手続きを経て改正案を議決する予定だ。今回の見直しは、ネット銀行にとって避けられない対面業務を認めるもので、地方銀行との法人向け共同融資を広げる制度基盤になる見通しだ。
金利競争力と債権管理が焦点
法人向け共同融資では、ネット銀行の非対面チャネルと地方銀行の企業審査力を組み合わせることで、融資の利便性向上と資金供給拡大が期待されている。融資資金を両行で分担するため、個別行の与信負担を分散できる点も利点だ。
もっとも、こうした協業が実際に借り手の金利負担をどこまで下げ、融資機会をどの程度広げられるかは今後の検証が必要となる。金融当局が掲げた「最低0.30ポイントの金利引き下げ」はあくまで政策目標であり、実際の貸出金利は企業の信用力や財務内容、担保条件などによって変動する可能性がある。
企業融資特有の健全性管理も重要な課題だ。個人向け信用ローンが所得や信用スコアなど比較的標準化された情報を軸に審査されるのに対し、企業融資では財務状況やキャッシュフロー、事業見通しに加え、代表者面談や現地調査といった非定量情報も総合的に評価する必要がある。
共同融資は、異なる2行が審査と資金供給を分担する構造だけに、審査基準に差がある場合の調整方法や、延滞・不良債権発生時の管理・回収をどう分担するかが焦点となる。企業与信では、融資実行後も資金使途や経営状況、担保価値を継続的に点検しなければならない。
また、共同融資が地域金融の活性化にどこまで寄与するかも検証課題となる。ネット銀行の全国規模の顧客獲得網を活用する構造だけに、実際に非首都圏の中小企業や小規模事業者へどれだけ資金が行き渡るかが、政策効果を測るうえでの指標になりそうだ。
個人向け信用ローンから始まった共同融資が法人融資へ広がる中、今後提供される商品の金利競争力や健全性指標、地域企業への資金供給実績が、銀行間協業モデルの成否を測る主要な判断材料となる。
Toss Bankの関係者は「法人向け共同融資は、両行が共同で審査し、資金も共同で負担することで、中小企業の顧客が必要な資金をより便利に確保できる意義ある革新商品だ」とコメントした。そのうえで「関係機関と緊密に協力し、企業顧客に新たな融資体験を提供していく」と述べた。