米リハイ大学の研究チームが、データセンターで発生する廃熱を蓄えて再利用するコンクリート系の熱バッテリーを試作した。サーバーの排熱を回収し、冷却設備や産業プロセス向けの熱源として活用することを想定しており、エネルギー効率の向上や廃熱利用の拡大につながる可能性がある。
米TechRadarが14日(現地時間)に報じたところによると、このシステムは、データセンターの計算設備から生じる熱を貯蔵し、必要なタイミングで取り出して使えるようにした熱貯蔵システムだ。
特徴は、冷却時に発生した熱を直ちに外部へ放出せず、専用の装置に蓄えて需要に応じて利用できる点にある。データセンターではサーバー負荷に応じて発熱量が変動する一方、熱エネルギーの需要は発生のタイミングと一致しないことが多い。熱バッテリーはこうした時間差を吸収し、廃熱を効率よく使うことを狙う。
試作機の熱貯蔵容量は150kWh。試験では最大500度まで耐え、1回の充放電サイクルで70%を超えるエネルギー効率を確認した。蓄えた熱エネルギーの大部分を回収し、再利用できることを示したとしている。
システムは、特殊設計のセメント系材料と熱サイフォンを組み合わせた構造を採る。熱サイフォンは装置内部で熱をすばやく移動させる役割を担う。研究チームは、異なる熱貯蔵メカニズムをコンクリート構造内に組み合わせた方式だと説明している。
熱を効率的に伝えながら比較的安定した温度を保ち、需要に応じて蓄えたエネルギーを取り出せる点も特徴として挙げた。
充電方式は2通りある。データセンターのサーバー廃熱を直接回収する方法に加え、電力で貯蔵装置を加熱する方式にも対応する。廃熱があるときはそれを優先的に蓄え、電力需給に応じて電気加熱を組み合わせるなど、柔軟な運用を想定している。
回収した熱を120〜220度まで高めて利用できる点も重要だ。この温度帯の熱は吸収式冷凍機に供給できるため、電気式冷凍設備への依存を抑えられる可能性がある。蓄えた熱は、乾燥工程や地域暖房、産業用熱源としての活用も見込む。
これまで冷却工程で捨てられていた熱を、外部のエネルギー需要へ振り向けられることにも意義がある。従来は、サーバーの安定稼働のために除去した熱を大気中へ放出するケースが多かった。熱貯蔵システムを導入すれば、隣接する産業施設や地域暖房向けに供給することも可能になる。ただ、実際の活用度は、需要先までの距離や配管などのインフラ整備コスト、必要な温度条件に左右される。
用途は冷却や暖房にとどまらない。研究チームは、蓄えた熱を低温ランキンサイクル装置に供給し、発電に使う案も示した。適用規模はキロワット級からメガワット級まで拡張できるとみており、高温太陽熱システムや産業排出削減、需要に応じた電力生産への応用可能性もあるとしている。
熱を蓄える時点と使う時点を切り分けられることは、データセンター運用の面でも利点になる。サーバー負荷と冷却需要は時間帯によって変動するが、熱バッテリーがあれば、発生直後に使えない廃熱もいったん蓄え、必要なタイミングで供給できる。施設全体のエネルギー運用をより柔軟にできるという。
開発は初期研究の段階を超え、事業化に向けたフェーズに入っている。この技術は米国の連邦エネルギー関連資金の一部支援を受けており、すでに民間エネルギー企業へライセンス移転された。今後は既存のエネルギーインフラとの統合を視野に、追加開発が進む見通しだ。
一方で、試作機で確認した性能を大規模データセンターでも同様に実現できるかどうかは、なお検証が必要だ。熱の貯蔵・回収に伴う損失、設備構築コスト、長期運用時の安定性などを見極める必要があるためだ。
AIの普及に伴ってデータセンターの電力消費と冷却負荷が増すなか、廃熱を蓄えて再利用する技術は、有力な省エネルギー手段の一つになりつつある。コンクリート系熱バッテリーが商用設備へ広がれば、これまで捨てられてきたデータセンターの熱を、冷却や暖房、産業プロセスへ循環させる仕組みづくりに寄与しそうだ。