NVIDIAは、AIデータセンターで使用される電力のうち最大4割が実際の演算処理に使われず、冷却や電力変換などで失われている可能性があると明らかにした。AIインフラの拡張では、半導体の調達以上に電力確保が大きな制約になり得るとみている。
米ITメディアのTechRadarによると、同社は10月14日(現地時間)、AIデータセンターにおける電力供給の制約について説明した。
この発言は、データセンター構築を手掛けるVertivが開いた欧州・中東・アフリカ(EMEA)の年次イベントで示されたもの。両社は2026年初めから次世代データセンターの共同設計を進めており、VertivはNVIDIAのGPU向け電力・インフラ管理を担っている。
NVIDIAによれば、電力網から供給された電力のうち、AI演算に直接使われるのは最大でも70%にとどまる。残る30%はインフラ運用やシステム上の非効率で消費され、条件によっては損失が40%に達する可能性もあるという。
1ギガワット(GW)級のデータセンターを前提にすると、冷却と電力の分配・変換だけで約20%を消費する。さらに、ラック設計の不備やシステム障害、再起動などによって、追加で10%程度のロスが生じると説明した。
ロード・エバンズ氏(NVIDIA、EMEAのスーパーコンピューティング/AIクラウドインフラ/AI・HPC担当副社長)は、契約した電力容量と実際に受電できる電力の間には大きな隔たりがあると指摘した。エバンズ氏は「100メガワット(MW)で契約しても、その全量を受け取れるとは限らない。運が良くて93MW、さらに少ない場合もある」と述べた。
NVIDIAは、余剰容量の活用や電力・冷却構成の見直しによって、こうした損失の一部は抑えられるとみている。エバンズ氏は「データセンターは平常時の使用量ではなく、ピーク負荷や障害発生を前提に設計される」としたうえで、確保済みの余力を効率的に使う必要があると説明した。
会場では、AIインフラ拡大の最大の制約は半導体の調達ではなく、電力の確保だとの見方も示された。電力供給が追いつかず、設備容量を備えていても必要な電力を受けられないデータセンターが出ており、設備規模に見合う電力供給を得るまで数年待つケースもあるという。
立地条件も大きな変数だ。ポール・ライアン氏(Vertiv EMEA社長)は、地域によっては電力を確保できても許認可が下りず、逆に許認可は早くても電力が不足する場合があると説明した。
電力と許認可の両方を確保できたとしても、立地が過度に遠隔地であれば、機器の搬入自体が難しくなるとも指摘した。
こうした状況を踏まえ、AIデータセンターの競争力は演算性能だけでなく、電力供給、冷却効率、設備運用の安定性まで含めて問われる局面に入りつつある。NVIDIAとVertivは、次世代設計を通じて電力ロスの削減と電力当たりの処理効率向上を進める方針だ。