Microsoftは、2〜6週先の気象予報の精度向上を狙う機械学習技術「PBC(Probabilistic Bias Correction、確率的偏り補正)」を公開した。既存の気象予報モデルが持つ予測の偏りを補正する手法で、スーパーコンピュータがなくても利用できる点を特徴とする。観測インフラが十分でない国や地域での活用も期待される。
米ITメディアのThe Vergeが10月14日付で報じた。Microsoftの研究チームはこの技術を開発し、研究成果を国際学術誌「Nature」に発表した。関連ソフトウェアもオープンソースとして公開している。
物理モデル、AI予報モデルのいずれも、予測期間が2週間を超えると精度が大きく落ちやすい。大気と海洋の複雑な相互作用を精緻に再現するのが難しい上、観測データの不足に起因する誤差が時間の経過とともに積み上がるためだ。
PBCは新たな予報モデルを一から構築するのではなく、既存モデルの過去予測と実際の観測結果を照らし合わせ、繰り返し現れる誤差傾向を学習する。そのうえで、気温や降水量などの予報確率を補正し、予測の信頼性を高める。高性能GPUを必要とせず、CPUだけで動作するため、大規模なAI予報システムに比べて導入しやすいという。
研究チームが欧州中期予報センター(ECMWF)の物理モデルにPBCを適用したところ、降水量では評価項目の98%、気温では92%、気圧関連では91%で性能改善が確認された。AI予報システムでも、予測性能指標が約2倍に向上したとしている。
PBCを用いた予報システムは、「AI Weather Quest」コンテストでも最高成績を収めた。
実運用に向けた取り組みも進んでいる。非営利の研究機関Rhiza Researchは、Gates Foundationの支援を受け、ケニアの気象当局とPBCの試験運用を進めている。農業向けの降水予測や、極端気象に対する早期警報への活用を見込む。
一方で、研究成果を気象当局の運用システムに安定的に組み込むには、なお課題が残る。Microsoftは、低コストで利用できる予報技術の普及によって、農業、災害対応、エネルギー管理などの分野で気象情報の活用が広がるとみている。