ウクライナ当局は14日、SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」で事前告知のない通信制限が行われ、軍のドローン運用や兵站支援に支障が出たと訴えた。制限の範囲や原因は調査中としており、SpaceXの説明に関心が集まっている。
The Vergeなどの海外メディアによると、ウクライナ国防省の関係者や大統領顧問は、今回の制限によって軍事作戦の遂行に影響が出ていると述べた。
ウクライナ大統領顧問のセルヒー・ベスクレストノウ氏はSNSへの投稿で、Starlinkが夜間に端末の速度を制限したと主張した。時速100マイル(約161キロ)を超える速度で移動する機器ではStarlinkへの接続が制限され、複数の任務に支障が出たとしている。
ただ、こうした主張を裏付ける具体的な証拠は示されていない。一方、国防省関係者も、軍事作戦や兵站支援、ドローン攻撃に支障が生じたとした上で、正確な原因は調査中だと明らかにした。
ベスクレストノウ氏は、今回の措置は偶発的なものではなく、足元の政治情勢と関係しているとの見方も示した。イーロン・マスク氏はXで、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領について「行き過ぎた」と批判しており、その後に通信制限を巡る疑惑が浮上して論争が広がった。
この投稿は、ドナルド・トランプ米大統領が、ウクライナによるロシアの製油施設への攻撃に否定的な姿勢を示したことを受けた反応だとされる。
ウクライナ軍は戦場でStarlinkを主要な通信手段として活用しており、衛星端末を搭載したドローンで遠隔操作や、任務中の標的変更などを行ってきた。今回の通信制限が事実であれば、ドローンの運用や作戦遂行に直接影響する可能性がある。
ウクライナ軍のStarlink依存は以前から指摘されてきた。2023年には、マスク氏がウクライナ軍によるクリミア半島攻撃を支援するためのStarlink有効化要請を拒否したと明らかにしている。Reutersも、SpaceXが2022年のウクライナ反攻時に前線部隊のStarlink接続を遮断し、作戦に支障を与えたと報じたことがある。
一方、今年2月には、SpaceXがウクライナ側の要請を受け、ロシア軍がウクライナ国内で使用するStarlink端末を制限した。当時の措置は、ウクライナ軍の反攻を後押ししたと伝えられている。
今回の論争は、ロシアによるウクライナへの弾道ミサイル攻撃が続く中で浮上した。ウクライナ当局は今週初め、キーウを含む地域へのミサイル攻撃を巡り、国際的なパートナーから事前警告を受けられなかったと発表している。
トランプ大統領は両国間でエネルギー分野の休戦が成立したと主張したが、ロシアの攻撃は続いた。トランプ大統領は、ウクライナによるロシアのエネルギー施設攻撃を理由に、米国が情報共有を停止するのかと問われたのに対し、情報提供は継続していると答えた。
国際社会からも批判の声が上がった。ウクライナのStarlink利用料を負担しているラドスワフ・シコルスキ・ポーランド副首相はXでマスク氏に対し、「製品をまた政治に使うのか」と述べ、欧州の顧客が状況を注視していると警告した。
今回の問題は、ウクライナ軍が依存する民間の衛星通信サービスが、戦場の作戦に与える影響の大きさを改めて浮き彫りにした。通信制限の適用範囲や原因、今後も継続するのかを含め、SpaceXの公式見解が注目される。