Morehのチョ・ガンウォン代表(写真提供:Moreh)

Morehのチョ・ガンウォン代表は、ソブリンAIの実現には独自AIモデルの開発だけでは足りず、国産AI半導体を学習用途にも広げることに加え、複数の半導体を効率的に接続・運用するインフラSWの確立が重要だとの認識を示した。

チョ代表は記者の取材に対し、「韓国は米国、中国を除けば、ソブリンAIの実現に最も近い位置にある国の一つだ」と述べた。その上で、「半導体やモデルだけでなく、データセンターやソフトウェアの領域でも独自技術を確保すべきだ」と強調した。

Morehは、異なるメーカーのAI半導体を同一データセンター内で効率的に運用するためのインフラSWを手がける企業だ。NVIDIA製GPUに限らず、AMDやTenstorrentの半導体でもAIモデルを稼働させ、演算処理を最適化することでデータセンターの運用コストを下げる技術を開発している。

チョ代表は、政府が進める独自AI基盤モデルの開発と国産AI半導体の育成政策を評価した。米中を除けば、この2分野で多様な企業が競争している国は多くなく、韓国でもフルスタック型のソブリンAIに向けた土台が整いつつあると説明した。

一方で、独自AIモデルの開発自体も不可欠だと指摘した。海外企業が常に最新モデルを公開し続けることを前提にすべきではないためだ。

チョ代表は「グローバルの先端モデルを3カ月から6カ月遅れであっても継続的に追随できれば、韓国企業の競争力維持に大きく寄与する」と述べた。Samsung Electronicsなどの国内企業が、機微な産業データを外部に出さず自社データセンターで処理しながら、世界最先端に近いAIモデルを活用できる環境が必要だとの考えを示した。

その上で、AIモデルにとどまらず、サプライチェーン全体へ技術的な自立を広げる必要があると強調した。これまで蓄積してきた半導体やインフラSWの能力をさらに発展させ、フルスタック型ソブリンAIに挑戦すべきだという立場だ。

課題として挙げたのが、AIモデルの学習段階における海外製半導体への依存低減だ。現在、国内でのAIモデル学習にはNVIDIAなど海外製GPUが主に使われており、RebellionsやFuriosaAIといった国内のNPU設計企業も、事業の中心を推論市場に置いている。

ただ、チョ代表は、国産NPUを使ったAIモデル学習も技術的に不可能ではないとみている。国内企業が推論市場に集中しているのは、技術上の限界というより、需要が比較的明確な市場から先に攻略するという事業判断によるものだと説明した。

「国産NPUが学習に使えない理由はないと思う。スタートアップとしては、まず需要が見えている市場を見るしかなく、現時点では推論分野に集中している」

学習と推論では、求められるインフラの条件も異なる。大規模モデルの学習は、一度失敗すれば開発日程が数カ月単位で遅れかねないため、実績のあるインフラが選ばれやすい。一方、推論ではトークン当たりコストの引き下げが重要で、多様な半導体を採用するインセンティブが大きいという。

国産NPUを大規模モデルの学習に活用するには、追加の技術開発と検証も欠かせない。学習では複数の半導体が演算を分担し、データを繰り返しやり取りするため、個々のチップ性能だけでなく、半導体間の通信性能や分散学習SWの完成度が重要になるからだ。

チョ代表は「学習SWは推論より解くべき課題がはるかに多い」とした一方で、NVIDIAのCUDAエコシステムが持つ参入障壁は徐々に低下していくとの見通しも示した。MorehもTenstorrentアクセラレータ向けの学習SW技術を社内で確保しているが、足元では推論市場の需要対応を優先しており、大規模学習の実証には至っていないという。

「異種半導体の組み合わせでコスト効率改善余地、課題はクラスタリング」

チョ代表は、フルスタック型ソブリンAIの実現に向けた中核課題として、複数の半導体を1つの大規模演算システムとして束ねる「クラスタリング」技術を挙げた。AIモデルが大規模化するほど、多数のチップが演算を分担することになる。そこでデータ転送や処理の調整が円滑に進まなければ、システム全体の性能が落ちる可能性があるためだ。

また、NVIDIAの競争力はGPU単体にとどまらず、NVLinkやNVSwitchといったインターコネクト技術にまで広がっていると分析した。NVIDIAが半導体間接続の性能を高めるハードウェア技術を強化する一方、Morehは異なるメーカーの半導体を単一インフラ上で効率的に運用するためのSW技術に注力しているという。

Morehは、NVIDIA H100とAMD MI300XでAI推論処理を分担する「異種分離推論」技術を開発した。社内実験では、特定の高負荷条件において、MI300Xのみを使った構成と比べて最大1.67倍のスループットを記録した。同社は、こうした異種半導体対応技術を国産NPUへ広げる案も検討している。

チョ代表は「最初に崩すべきなのは、『NVIDIAにしかできない』という認識だ」と述べた。「AMDのような別の半導体を国内に導入し、活用できることを示すのも、長期的には国産NPUの後押しになり得る」との考えを示した。

さらに、「1つの半導体ですべての処理をうまくこなすことはできない」と指摘した上で、「国産NPUも特定の作業で競争力を確保できれば、データセンター全体の処理の5〜10%を担うだけでも十分に大きな市場になり得る」と強調した。

こうした市場参入を後押しするには、政府支援のあり方も見直す必要があるとの立場も示した。国産半導体の使用比率を割り当てるのではなく、国内で生産されるAIトークンの需要拡大に政策の軸足を移すべきだとし、需要企業に「トークンバウチャー」を提供する案を提起した。

トークンを購入する企業は、演算に使われた半導体の種類そのものより、価格と性能を重視する。そのため、実需が確保されれば、供給企業もコストを下げるために、多様な半導体とSWを組み合わせる方向へ動くとの見方だ。

チョ代表は「需要先さえ作れば、企業は自ら検証し、協力する」と述べた。さらに「例えば、SW導入によって演算効率を30%高め、より多くのトークンを生産して収益を伸ばせるのであれば、政府に言われなくても協力するはずだ」と語った。

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