Coinbaseは、Bitcoinの耐量子移行に向けた提言を公表し、署名方式の更新と資金移転の準備に早期に着手すべきだとの考えを示した。
10月14日付のCoinPostによると、Coinbaseは、合意形成やエコシステム全体の移行には年単位の時間を要する可能性があるとして、量子コンピューターが実際に既存の暗号を破れるようになる前から備えを進める必要があると指摘した。
Coinbaseは、Bitcoinの総供給量の約5%を保管する世界有数の暗号資産カストディ事業者の1社。提言では、公開鍵が既に明らかになっている資金と新規資金の保護、限られたブロック容量への対応、フルノードによる独立検証の維持、機関投資家向けカストディと一般的なウォレット運用の両立、移転が難しいコインへの対応までを含む包括的な戦略が必要だとした。
技術面では、トランザクション出力の種類と署名方式を切り分ける設計を支持した。複数のポスト量子署名を大幅な再設計なしに追加・置換できる構造が望ましいとして、P2MR(BIP-360)とP2TRv2を有力候補に挙げた。
初期移行の一例としては、従来の署名とポスト量子署名のいずれか一方で支出できる「1-of-2」構成を提示した。一般的なウォレットでは既存の鍵を継続利用しつつ、必要に応じて量子耐性のある鍵へ切り替えられると説明している。
一方で、ステートフルな署名方式の採用には慎重な姿勢を示した。小型化や高速化が期待できる半面、内部状態を再利用すると直ちに偽造につながるおそれがあるためだ。
そのうえで、実装に当たっては、プラットフォームが異なっても同じ結果を返す検証方式、定数時間実装、乱数生成の失敗に対する耐性を重視すべきだと提案した。
また、大規模組織では鍵の奪取防止のためMPCを活用しているケースがあることを踏まえ、少なくとも1つの署名方式はMPCとの親和性を備える必要があるとの見方も示した。一部の格子ベース方式が候補になり得る点にも触れている。
休眠コイン、紛失コイン、公開鍵が露出済みのコインをどう扱うかは、別の論点として整理すべきだとの見解も示した。Coinbaseは、これはガバナンスと工学の双方にまたがる問題だとしたうえで、救済策を設計するのであれば、その経路自体が量子コンピューターに対して安全であり、攻撃者に悪用されないことを立証する必要があると指摘した。
さらに、所有者がシードなどの秘密情報を失った場合の取り扱い基準や、救済措置に期限を設ける際の判断基準も明確にすべきだと付け加えた。
この論点は、サトシ・ナカモトの保有分とみられる初期のBitcoinをどう扱うかという議論にもつながる。業界では、量子攻撃が可能になる前に当該コインを凍結する案や、より安全なアドレスへ移す案が議論されてきた。ただ、本人の同意なく資産を動かすことになれば、財産権の侵害を巡る論争を招く可能性がある。