水素トラック向けインフラは、実需と採算性を見極めた上で整備を進める必要がある。写真はイメージ=Shutterstock

欧州で水素トラック向けインフラの整備が先行するなか、車両需要や事業採算性を十分に見極めるべきだとの指摘が出ている。利用車両が増えないまま水素ステーションだけを増設すれば、運営赤字を公的支援で埋める構図になりかねないためだ。韓国の事例は、そのリスクを示すケースとして注目されている。

電気自動車専門メディアのCleanTechnicaは13日、欧州の水素インフラ拡大政策を分析する記事を掲載し、韓国の運営実態を主要事例として取り上げた。欧州連合(EU)は代替燃料インフラ規則(AFIR)に基づき、2030年までに欧州横断交通網(TEN-T)の中核ネットワーク上で、おおむね200kmごとに水素ステーションを配置する計画だ。指定都市の拠点にも供給施設を整備する方針を掲げている。

AFIRに適合するインフラ整備に必要な資本投資額は、約21億ユーロと推計されている。

これに対し韓国では、水素インフラの整備ペースに比べて車両導入が伸び悩んでいる。2026年8月時点の水素ステーションは493カ所と、2030年目標の最低660カ所に対して74.7%に達した。

一方で、水素車の累計導入台数は同時点で4万9722台にとどまり、政府目標の30万台に対する達成率は約16.6%だった。

水素ステーションの収益性も課題だ。2026年上期に評価対象となった商用水素ステーション258カ所のうち、208カ所が運営損失の補填に向けた政府支援を受けた。全体の80.6%に当たる。

比較的新しく開設された施設でも、事業見通しの悪化や財務負担を理由に運営を中断した例があるという。ただし、政府支援を受けていない施設がすべて黒字とは限らない。

水素ステーションが採算を確保できるかどうかは、安定した需要をどれだけ取り込めるかに左右される。全州平和充電所は、水素バスの需要が集中する環境を背景に、2024年に損益分岐点へ到達したと報告された。

もっとも、この施設も建設段階では補助金が投入されており、損益分岐点の算定に初期投資の償却費を織り込んでいたかどうかは明らかでない。供給水素も化石燃料由来だった。運行ルートが固定され、燃料消費量を見込みやすいバス向け施設と、需要の読みづらい高速道路沿いの施設を同じ基準で評価しにくいことを示している。

水素の製造方式によるコスト差も、事業性を大きく左右する。韓国の水素ステーション事業は、比較的安価な化石燃料由来の水素や、石油化学工程で発生する副生水素への依存度が高かった。再生可能エネルギー由来の水素は温室効果ガス削減の面では有利だが、製造コストの上昇はステーション運営の経済性を圧迫する可能性がある。

欧州でも、水素製造時の排出削減を進めながら、輸送、圧縮、充填にかかるコストをどう吸収するかが課題となる。

さらに、バッテリー電気トラックの普及や大型EV向け高出力充電インフラの拡充も、水素ステーションの潜在需要に影響を与える可能性がある。電動化が想定以上に進めば、水素インフラが確保できる顧客基盤は縮小しかねない。

このため、欧州ではインフラ拡大を自明視するのではなく、新設施設ごとに想定需要、資本支出と運営費、公的支援の必要額、水素価格と製造方式、実際の温室効果ガス削減効果を精査すべきだとCleanTechnicaは指摘した。韓国の事例は、インフラ整備そのものが持続可能な市場形成を保証するわけではないことを示している。

キーワード

#水素 #水素トラック #水素ステーション #EU #AFIR #TEN-T
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.