SRMの国際ガバナンスを巡る模擬協議では、各国が最終的に合意に至らなかった。画像はイメージです

太陽光の一部を反射して地球の気温を下げる気候工学技術「太陽放射改変(SRM)」を巡り、国際ガバナンスの在り方を検証する模擬協議が合意に至らず終了した。気候変動への対応という共通目標よりも、米中の戦略的競争や国家主権が前面に出て、科学的論点は後景に追いやられた。

米ITメディアArs Technicaによると、英リーズ大学やロンドン大学クイーンメアリー校などの研究チームは10月13日、SRMの国際ガバナンスを検証する模擬協議の結果を公表した。

SRMは、地球に届く太陽エネルギーの一部を宇宙空間へ反射し、温暖化の進行を抑えることを狙う技術だ。代表例としては、成層圏にエアロゾル粒子を散布する手法がある。一方で、地域ごとの降水量の変化や異常気象、技術の中断時に急激な気温上昇を招くリスクなどが懸念されている。

研究チームは、外交、科学、安全保障の専門家ら35人を集め、国家や企業、非政府組織(NGO)の役割を割り当てた。参加者は2025年、2027年、2028年の3つの時点を想定し、計3回の模擬協議に臨んだ。

協議は初回から対立が表面化した。米国役と中国役の参加者はいずれも、自国の研究を制約したり、相手国に技術的優位を与えたりしかねない合意には応じなかった。

さらに、ロシア役には米国の秘密研究を示唆する架空情報が与えられ、相互不信が一段と強まった。米国役は中国の独自技術開発にも疑念を示し、国際調査を求めたという。

科学者による助言も、協議の方向を変えるには至らなかった。参加者の関心は、気候影響に関する客観的な説明よりも、自国の立場を補強する材料に向かった。

最終段階では、米国とサウジアラビアが共同でエアロゾル散布を試験したという架空の事態も設定された。それでも、監視・検証体制を巡る合意はまとまらなかった。

研究チームは、3回の協議がいずれも不調に終わった主因として、戦略的競争と国家主権の問題を挙げた。

一方、英国政府はこのほど、SRMに関する公式の政策文書を公表した。責任ある研究は支援する一方、実際の技術配備は支持しない立場を示している。

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