ビットコイン採掘企業によるAI・HPC分野への参入が加速している。受注規模は総額1000億ドルに達した一方、実際に稼働して売上計上につながっている案件はなお限られている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが13日(現地時間)に伝えたところによると、採掘企業が確保したAI・HPC関連契約の電力容量は4ギガワット(GW)を超えた。ただ、実際にサービス提供が始まり、課金対象となっている容量は550メガワット(MW)にとどまる。
CoinSharesは、これら案件に伴う年間売上を約11億ドルと試算した。複数年契約の総額と、足元で計上される売上高との間には大きな開きがある。
受注を売上に結び付けるには、設備の建設と稼働開始が前提となる。契約実績が業績に反映されるまでには時間がかかる。
IRENも大型案件報道で注目を集めている。BlockspaceはThe Informationを引用し、IRENがAnthropicと複数年のクラウド契約を結んだと報じた。
ただ、両社はこの内容を確認しておらず、契約の詳細も明らかになっていない。
IRENが示す売上指標についても、実績とは切り分けてみる必要がある。同社が示した2026年の設備ベースの年換算契約売上高(ARR)は40億ドルだが、8月26日時点で稼働中の設備に基づくARRは10億ドル水準にとどまった。
IRENは米証券取引委員会(SEC)への開示資料で、実際の売上計上額がARRを下回る可能性があると警告した。契約に基づく年換算値は、確定した売上を意味しないと説明している。
足元の業績では、依然として採掘事業の比重が大きい。IRENの2026年度のAIクラウドサービス売上高は1億2880万ドルで、前年度の1640万ドルから大きく伸びた。
一方、同期間の採掘事業売上高は5億7820万ドルに達した。純損失は7億260万ドルで、このうち6億3880万ドルは主として採掘設備の廃棄に伴う非現金の減損損失だった。
採掘企業がAIへ軸足を移す背景には、ビットコイン採掘の採算悪化がある。2026年第2四半期末のビットコイン終値は5万8400ドルで、採掘企業が示した1BTC当たりの現金採掘コスト7万5500ドルを下回った。
Core Scientificは設備発注のキャンセル関連で4190万ドル超を支出し、Cuilは6月29日に採掘事業を終了した。IRENとCipherについても採掘事業からの撤退観測が出ており、上場採掘企業ベースで35EH/s(エクサハッシュ/秒)超の計算能力が市場から消える可能性があるとの見方が出ている。
もっとも、AI分野への転換は契約締結だけで完結するものではない。IRENはMicrosoft向けに50MW規模の液浸冷却施設「Horizon 1」を引き渡しており、「Horizon 2」は試運転段階にある。
「Horizon 3」と「Horizon 4」は2026年第4四半期の完成を目標としているが、必要なリソースを期限内に確保できることが前提となる。
資金調達や施設建設に伴うコストも重い。IRENはMicrosoft関連のGPUプロジェクト向け資金として36億ドルを年利6%で、Mackenzie事業の拡張資金として24億ドルを年利9%で調達した。
新規契約に必要なGPU費用の約45〜55%は顧客の前払い金で賄うものの、既存の採掘施設をAI向けへ転用するにも相応のコストがかかる。CoinSharesによると、AI向け設備の建設費は1MW当たり800万〜1500万ドルで、100万ドル未満のビットコイン採掘施設を大きく上回る。
AI関連契約を比較する際は、公式確認の有無に加え、提供するサービスの性格の違いにも目を向ける必要がある。Akamaiは9月24日、Anthropicと7年間で116億ドル規模の契約を締結したと発表した。
この契約では、AnthropicにAkamai株を最大5%取得できるワラントも付与された。ただ、契約の中心は中央処理装置(CPU)ベースの処理であり、採掘企業が主力とするGPU計算容量の供給とは性格が異なる。
事業拡大に向けたもう1つの焦点は、十分な電力供給が可能な用地の確保だ。CoinSharesによると、米国内ではデータセンター関連の制限措置が225件あり、送電網接続を待つ電力容量は2600GWに達する。
テナントを確保したAI施設は1MW当たり約2700万ドルで評価された一方、一部の未賃貸の採掘用地は1MW当たり300万ドル未満にとどまった。
国際エネルギー機関(IEA)は、2030年の世界のデータセンター電力消費量が950テラワット時(TWh)に達すると予測している。ただ、電力需要の増加や供給不足が、そのまま個別企業の収益を保証するわけではない。
採掘企業のAI転換が成功するかどうかは、大型受注を実際の設備稼働と売上につなげ、金融費用を吸収できるだけのキャッシュフローを確保できるかにかかっている。